ひまし油は古来、解毒作用があるとされ、日本でも下剤として用いられてきました。世界的にもその歴史は古く、ギリシャ時代から万能役とされていたそうです。外用に関しては、何がデトックス効果をもたらすのか、まだ判明していませんが、ひまし油を塗ることで肌の健康を保つセルフケアは、古今東西で行われています。【解説】渡辺奈津(医療法人あすなろ会わたなべ皮フ科・形成外科理事長)
解説者のプロフィール
渡辺奈津(わたなべ・なつ)
医療法人あすなろ会わたなべ皮フ科・形成外科理事長。1962年、大阪府生まれ。87年、神戸大学医学部卒業。京都大学附属病院、倉敷中央病院を経て、93年に開業。以来、7万5000人以上を診察。西洋医学だけでなく、中医学(漢方医学)、心理療法、同種療法(代替医療)などさまざまな医療を研究し、従来の皮膚科医では対処できなかった多くの患者を完治へと導いてきた。皮膚科学会、美容皮膚科学会、バイタルフォース研究会などに所属。著書に『日本人の肌はなぜ世界一美しいのか?』(主婦の友社)、『クラシカル・ホメオパシーガイド』(源草社)。
▼わたなべ皮フ科・形成外科(公式サイト)
ひまし油とは?
最近は、食用油もスキンケア用のオイルも、さまざまなものが市販されています。
皆さんは、今回ご紹介する「ひまし油」をご存じでしょうか。ひまし油は、トウゴマという植物の種子から採取する植物油の一種です。不飽和脂肪酸(リシノール酸87%、オレイン酸7%、リノール酸3%)と、少量の飽和脂肪酸で構成されます。別名キャスターオイルとも呼ばれ、石けんや香水、ポマードや鬢付け油などのヘアオイルのほか、潤滑油や塗料、ワックスなどの原料として用いられています。
ひまし油は古来、解毒作用があるとされてきました。日本でも下剤として用いられ、日本薬局方(医薬品の規格基準書)にも収載されています。効果・効能として、「便秘症、食中毒における腸管内容物の排除、消化管検査時又は手術前後における腸管内容物の排除」と記載されています。世界的にもその歴史は古く、ギリシャ時代から万能薬とされていたそうです。
美肌のためにはデトックスが重要
古い細胞が排出されないと肌のトラブルに
便秘や食中毒に限らず、体内の老廃物を速やかに排出することは、健康の基本です。お肌に関しても、同様のことが言えます。「ターンオーバー」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。私たちの肌は、一定の周期で生まれ変わります。皮膚の下で新しい細胞が作られ、肌の表面に出てきます。それがアカなどになってはがれ落ち、下から上がってきた新しい細胞と入れ替わる、というのが、ターンオーバーのしくみです。
このサイクルが乱れることで、肌のトラブルにつながります。睡眠不足や食生活の乱れなどによって、古い細胞が適切に排出されないと、肌荒れやニキビ、くすみ、シミ、イボ、ざらつきなどが起こりやすくなります。
ひまし油を使ったセルフケアがおすすめ
美しく健康な肌には、適切な肌のターンオーバーが不可欠です。前述したように日本の医学界では、ひまし油は飲用することで毒素を排出する薬として使われてきました。外用に関しては、何がデトックス効果をもたらすのか、まだ判明していませんが、ひまし油を塗ることで肌の健康を保つセルフケアは、古今東西で行われています。私自身も愛用しており、おかげさまで肌の調子は良好です。シミやイボなど肌の悩みを抱える患者さんにも、セルフケアとしてひまし油をよく勧めています。
ただし、シミやホクロ、イボに似ている悪性の病気もあります。通常と違う様子が見られたり、色や形が急に変わったりするときは、必ず皮膚科を受診してください。
ひまし油は、一般の薬局でも購入できます。質のよい、添加物の入っていない天然のものを選びましょう。
ひまし油
天然100%無添加 安心の国内精製
ひまし油の使い方
気になる部分に薄く塗るだけ
ひまし油の使い方は、きわめてシンプルです。ひまし油を、シミやイボなど気になる箇所に薄く塗るだけです。
ただし、初めて塗るときには必ずパッチテストを行いましょう。腕の内側などにひまし油を少量塗ってしばらくおき、赤味やかゆみなどが出ないか確認します。異常が出たら直ちに使用を中止してください。
注意点と保管方法
ひまし油は重めのテクスチャーで、わかりやすく言うとハチミツみたいな感じです。ベタベタしやすいので注意してください。広範囲に薄く伸ばすというより、ピンポイントでシミやイボに塗るほうが使いやすいと思います。もちろん、顔全体に塗ってもかまいませんが、薄く光る程度が目安です。つけ過ぎないようにしましょう。自宅で過ごしている間であれば、朝から晩まで、いつ塗ってもかまいません。
ただし、就寝前にひまし油を塗ってすぐ布団に入ると、ひまし油が寝具についてしまう可能性があります。夜のスキンケアに使う場合は、表面が乾いたことを確認してから就寝するようにしましょう。
ひまし油の主成分である不飽和脂肪酸は、紫外線で酸化しやすい性質があります。酸化した油は肌に負担をかけ、肌荒れの原因になります。外出時にはひまし油をつけず、つけていたら洗顔してから出かけましょう。また、ひまし油の保管に関しても、できるだけ光の当たらない場所を選び、酸化しないように注意してください。
ただし、1点だけ注意点があります。ひまし油は、直射日光に当たると酸化しやすいので、外出時には濡れタオルなどで拭き取るか、洗顔してからお出かけください。
重曹と混ぜてペーストにしても
大きめのイボやシミには、ひまし油と重曹を1対2で混ぜたペーストを塗り、ガーゼ付き絆創膏を貼っておくのもよいでしょう。ペーストにすると、ひまし油が患部にしっかり留まり、じゅうぶんに肌に浸透します。
また、重曹にも、たんぱく質を分解したり油脂を乳化させたりする作用があります。肌に対しては、余分な皮脂や毛穴汚れを落としやすくする効果が期待できます。ちなみに、温泉の「重曹泉(炭酸水素塩泉)」は、皮膚表面の古い角質層を溶かして除き、肌をなめらかにすることから、「美肌の湯」と呼ばれることが多いそうです。
重層は食品にも使われており、基本的に人体には無害ですが、弱アルカリ性なので皮膚に刺激があります。ひまし油に重層を混ぜたペーストを使う場合も、顔に塗る前に必ずパッチテストを行いましょう。
ひまし油と重曹のペーストは、1日1回を目安に塗り直してください。
「ひまし油湿布」で全身のデトックス力を高める
「解毒」を担う肝臓を温めよう
肌の健康を維持するには、ひまし油を顔に塗るだけでなく、全身のデトックス力を高めることも重要です。内臓が納まっているおなかを冷やさないように、日ごろから注意しましょう。特に、解毒を担当している肝臓付近は、積極的に温める習慣をつけるのがおすすめです。肝臓は、体にとって有害な物質を分解し、無毒化する働きを担っています。お酒に含まれるアルコールや、代謝などの際に体内で発生するアンモニアなど、体にとって有害なものを、肝臓が無害なものへと処理しているのです。
ひまし油湿布のやり方
肝臓の働きを活性化させ、全身のデトックス力を高めるおすすめのセルフケアが、「ひまし油湿布」です。ホリスティック医学の生みの親として知られるエドガー・ケイシーが提唱する療法の1つです。ひまし油のデトックス効果と温熱効果で、全身の解毒作用が活発になるとされます。
ひまし油をたっぷり含ませたフランネルの布を、肝臓のある右脇腹に当てて横になり、温熱パックなどで1時間ほど温めます。その間は、静かな音楽を聴くなどして、ゆったり過ごしましょう。寝具にひまし油がつかないよう、使い古しのバスタオルなどを敷くといいでしょう。
まとめ
以前、多数のイボが手足にできて悩んでいた患者さんに、ひまし油の直塗りとひまし油湿布を指導したことがあります。すると、2週間ほどでイボが急にポロポロとはがれ落ち、半年ほどでイボがなくなりました。また、シミが薄くなったという人や、乾燥による小鼻の皮むけが治ったという人もいます。もちろん、すべての人に同じ効果が得られるとは限りませんが、タイミングや体質が合えば改善が期待できるでしょう。お肌のお手入れや日々の健康を維持するセルフケアとして、お試しいただければと思います。