トマトに含まれるリコピンという赤い色素成分には、強力な抗酸化作用があります。活性酸素を消去すれば、動脈硬化をはじめ、高血圧、心疾患などの予防になるのです。また、シミ、シワ、たるみなど、肌の老化防止にもリコピンはうってつけの成分です。【解説】岸村康代(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)
解説者のプロフィール
岸村康代(きしむら・やすよ)
フードプランナー、管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロ。一般社団法人大人のダイエット研究所代表理事。メタボリックシンドローム指導の現場で数々の10kg減、20kg減という健康的なダイエットのサポートをしてきた経験や、野菜ソムリエなどの資格を活かし、商品開発、事業開発、講師、メディア出演など、多方面で活動。近著に『落とした脂肪は合計10トン! 伝説のダイエット・アドバイザーが教える最強のやせ方』(東洋経済新報社)などがある。
トマトがあれば出汁不要ケチャップもみそに合う
私は、野菜ソムリエとフードプランナーの活動を通して、「おいしくて食べて健康になる食事」の実践方法を、多くのかたにアドバイスしてきました。
食事作りは毎日のことですから、手軽に調理できて、効率よく栄養がとれることが大切です。そこでお勧めしたいのが、トマトを具にした「トマトみそ汁」です。
発酵食品であるみそには、良質な植物性たんぱく質やミネラル、ビタミン、メラノイジンなどの栄養素が多く含まれています。
また、腸内環境を整える乳酸菌も豊富で、みそを習慣的にとることで、生活習慣病の発症リスクを下げることが明らかになっています。
一方、トマトに含まれるリコピンという赤い色素成分には、病気や老化を促進する活性酸素を消去する、強力な抗酸化作用があります。
血液中のLDLコレステロールが活性酸素によって酸化されると、血管の内皮が傷つき、動脈硬化が引き起こされます。
トマトをしっかりとって活性酸素を消去すれば、動脈硬化をはじめ、高血圧、心疾患などの予防になるのです。
また、紫外線から生じる活性酸素などによって引き起こされるシミ、シワ、たるみなど、肌の老化防止にもリコピンはうってつけの成分です。
トマトは、加熱調理をすることで、リコピンの吸収率がさらに上がります。トマトの栄養成分が溶け出しているみそ汁を食べれば、美容と健康の維持に大いに役立つというわけです。
私流のトマトみそ汁の作り方を、下にまとめました。
岸村先生流
《トマトみそ汁の作り方》
【材料】(2人分)
トマト…中1個
みそ…大さじ1
出汁または水…300ml
オリーブオイル…適量
塩…少々
そのほか、お好みの具材を入れてよい。
❶トマトを適当な大きさに切る。
❷鍋に(1)とオリーブオイルを入れて炒める。水分が飛んだら塩を振り、いったん取り出す。
❸別の鍋に出汁を入れて火にかけ、(2)を加えて煮立ったらみそを溶き入れ、器に盛る。
おいしく作るコツは、トマトをあらかじめ、オリーブオイルで炒めておくことです。トマトの水っぽさが消えて、酸味がまろやかになるうえ、みそ汁にコクが出ます。
また、トマトとオリーブオイルをいっしょにとることで、リコピンの吸収率がさらに高まります。
大玉のトマトは水分が多いので、実がかたいフルーツトマトや、ミニトマトを使うのもいいでしょう。
トマトみそ汁は、出汁を取らずに、水だけで作ってもかまいません。トマトには、旨み成分のグルタミン酸が含まれています。
もしくは、水:トマトジュース=2:1の割合で加えても、出汁がわりになります。また、隠し味にケチャップを大さじ1程度加えると、さらに味わい深くなります。
出汁を使う場合は、カツオ節や豚肉など、イノシン酸が豊富な食材から出汁をとると、トマトのグルタミン酸との相乗効果で旨みがアップするので、お勧めです。
なお、みそは火を入れ過ぎると風味が飛ぶので、溶き入れたらすぐに火を止めましょう。
キノコを加えれば腸内環境がさらに整う!
トマト以外の食材も加えて、具だくさんのトマトみそ汁にすれば、腸内環境を整える効果がさらに高まります。
例えば、低エネルギー(カロリー)で食物繊維が豊富なエノキやシイタケなどのキノコ類がお勧めです。また、豚肉やタマネギ、ニンジンなどを入れて豚汁風にすると、栄養満点の一品になります。
ちなみに、具だくさんにするときは、トマト以外の具材に先に火を通して、最後に炒めたトマトを加えると、煮くずれしません。
私も長年、トマトの健康パワーを目の当たりにしてきました。81歳になる私の父は、50歳のころから毎朝、トマトジュースを飲むようになりました。
それから30年以上経った今でも、父は飲み続けています。数年前まで、趣味で畑を耕していましたが、直射日光を浴び続けていたにもかかわらず、肌はピチピチです。周囲からは、「60代かと思いました!」と、よく驚かれるそうです。
リコピンは、朝にとると最も吸収力が高まる、という研究があります。
父は、たまたま朝食のときにトマトジュースを飲んでいたのですが、それも功を奏したのかもしれません。健康で若々しい父を見るにつけ、トマトの抗酸化作用のすごさを実感しています。
私も毎朝、みそ汁だけは欠かさずにとるようにしています。具は、豆腐とワカメばかりだと飽きてしまうので、トマトみそ汁も、ときどき作っています。
朝はなにかと慌ただしいのですが、温かいみそ汁をとるとホッと落ち着き、元気が出ます。皆さんも、栄養価の高いトマトみそ汁を朝の一品に加え、ぜひ健康に役立ててください。
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