お茶の主な栄養成分はカテキン、テアニン、ビタミンC・E、ベータカロチン、食物繊維など。特にテアニンは現代人の睡眠の悩みやストレスの改善に有効で、最近では、うつやPTSDなどの精神的な症状、認知症にいいことも明らかになってきました。【解説】栗原毅(栗原クリニック東京・日本橋院長)
解説者のプロフィール
栗原毅(くりはら・たけし)
栗原クリニック東京・日本橋院長。1951年、新潟県生まれ。78年、北里大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器病センター内科、同大学青山病院・同成人医学センター助教授、中国中医研究院客員教授、東京女子医科大学教授、慶應義塾大学教授、東京女子医科大学教授などを経て、08年に開業。医学博士。日本肝臓学会専門医、日本内科学会認定医、日本未病システム学会認定医。『薬を捨てる 糖尿病を治す』(廣済堂)、『薬に頼らず血糖値をラクラク下げるコツ』(河出書房新社)、『緑茶を食べると、なぜ糖尿病や認知症に効くのか』(主婦の友社)など著書多数。
患者さんにもよく勧めている
ほんの何十年か前までの日本人にとって、茶葉を家庭に常備し、お茶を淹れるのは、ごくあたりまえで日常的な習慣でした。
しかし今では、お茶、コーヒー、水などの手軽なペットボトル商品も増え、お茶を日常的に淹れる人は、年々減っているようです。
その一方で、ミキサーやミルで茶葉を粉砕して、茶葉を丸ごと料理に使うかたは増えています。
茶葉を使った料理のレシピサイトをのぞくと、「茶葉の栄養を丸ごと取るのは、体によさそう」「茶殻にも栄養が残っている気がして、捨てるのはもったいないと思う」「家族の健康のために」などの口コミが見られます。
この感覚は、大正解。長い歴史の中で、お茶を飲み続けてきた日本人ならではの感覚です。実際、お茶の健康効果には目を見張るものがあります。
お茶の主な栄養成分は、カテキン、テアニン、ビタミンC・E、ベータカロチン、食物繊維など。特に、ポリフェノールの一種であるカテキンは、糖尿病、認知症、ガン、肥満、肝臓病などの予防・改善にも効果的で、一般のかたへの認知も高まっています。私も、患者さんたちにお茶を勧めることはよくあります。
うつや認知症への効果も明らかに
さて、お茶の多様な成分のうち、私が特に注目しているのは「テアニン」です。
テアニンはアミノ酸の一種で、お茶のうま味、甘味を醸し出すとともに、飲んだかたにリラックスをもたらします。
現代人の睡眠の悩みやストレスの改善に有効で、最近では、うつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神的な症状、認知症にいいことも明らかになってきました。
テアニンのリラックス効果は、夕方以降の摂取なら、スムーズな寝つきと、深い眠りを促します。
日中も、忙しい現代人にとって、テアニンは有益です。山のような仕事や家事に追われ、興奮しきった状態のとき、テアニンの作用で心を落ち着かせると、家事や仕事の能率アップにつながります。
眠気が増すことはありません。むしろ、平常心を取り戻すことで、覚醒したかのような感覚を得られるのではないでしょうか。
テアニンには、副交感神経(心身をリラックスさせる神経)を優位にし、血圧を下げる作用もあります。この作用もやはり、質のいい睡眠につながります。
心を落ち着かせて能率アップ
ゆったりとした気分で過ごせると、仕事や家事も
スムーズに。眠気が増すことはない
質のいい睡眠を促進
血圧が下がり、リラックスモードに。心地よく眠りにつけ、睡眠も深まる
ぬるいお湯でじっくり淹れるといい
カテキンが、ウーロン茶や紅茶など幅広い種類のお茶に含まれるのに対し、テアニンは、緑茶、煎茶、抹茶など、緑色のお茶に多く含まれます。
快眠効果を期待してお茶を飲むなら、緑色のお茶を、1日3~5杯を目安に飲みましょう。もっと多く飲んでも、問題はありません。
テアニンを多く抽出するには、冷水、あるいは30~40度ほどのぬるいお湯を使って、時間をかけて淹れるのがお勧めです。
少なくとも30分、できれは一晩かけて、テアニンをじっくり抽出してみてください。熱いお湯で淹れたときと比べて、より淡く美しい黄色から緑色になっていれば、テアニンが豊かに含まれているサインです。
ところで、覚醒を促す成分、カフェインがお茶に含まれていることを気にされるかたもいるかもしれません。しかし、テアニンがカフェインの作用を抑制するので、その影響は問題ない範囲です。
また、カフェインがたくさん出てくるのは、80度以上のお湯でお茶を淹れた場合。それ以下の温度で淹れれば、カフェインへの心配は無用です。
ストレスの多い現代社会。睡眠の悩み、ストレス、精神的な不調のあるかたは増える一方ですが、睡眠導入剤や抗うつ、抗不安薬を検討する前に、まずは日々の生活にお茶を取り入れてみてはいかがでしょうか。