【炭酸入浴の効果】血圧を下げる入り方は「ぬるめ&長湯」 入浴剤を使っても大丈夫?

美容・ヘルスケア

炭酸入浴で最も期待できるのが、血流・新陳代謝の促進作用です。通常の湯に入浴するだけでも血管が拡張し、血流が促進されますが、二酸化炭素が溶け込んだ湯につかれば、その効果がさらに高まるというわけです。【解説】前田眞治(国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野教授・医師)

解説者のプロフィール

前田眞治(まえだ・まさはる)
国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野教授。医学博士。リハビリテーション専門医。脳卒中専門医。リウマチ科専門医。1974年、北里大学医学部卒業。神奈川県総合リハビリテーションセンター、北里大学東病院リハビリテーション科科長などを経て2005年より現職。著書に『炭酸パワーで健康になる!』(洋泉社)がある。

炭酸入浴剤でも効果は決して少なくない

私は30年以上にわたり温泉の研究をしており、なかでも炭酸泉の治療効果を臨床に生かすべく、研究を続けています。

炭酸というと、皆さんがまず頭に思い浮かべるのは、飲料としての炭酸水ではないでしょうか。炭酸水は、二酸化炭素(炭酸ガス)が水に溶け込んだ物で、飲むと便秘解消やダイエット効果があります。また逆に食欲のないときに少量飲むと、食欲増進などに役立ちます。

炭酸水の効能は飲むだけに留まりません。私がお勧めしたいのが、炭酸泉や炭酸風呂の入浴です。

炭酸泉は、天然の二酸化炭素を含んだ温泉です。この炭酸泉に入るのが炭酸入浴ですが、二酸化炭素が発生する入浴剤を利用すれば、自宅でも簡単に炭酸入浴をすることができます。

もちろん、炭酸泉に比べれば二酸化炭素の濃度は低いのですが、それでも毎日続けることで得られる効果は、決して少なくありません。

むしろ、入浴後の体の温かさの保持という点では、炭酸泉よりも保温剤の入った炭酸入浴剤が上回ることもあります。

ちなみに、炭酸入浴剤で発生する二酸化炭素は、体内にも存在するものなので、安全性も高く、毎日使っても安心です。

血行障害の治療などにも取り入れられている

炭酸入浴で最も期待できるのが、血流・新陳代謝の促進作用です。

通常の湯に入浴するだけでも血管が拡張し、血流が促進されますが、二酸化炭素が溶け込んだ湯につかれば、その効果がさらに高まるというわけです。

そのメカニズムについて、簡単に説明しましょう。

まず、湯に溶け込んだ二酸化炭素は、肌の外側に当たる表皮を通り抜け、5分ほどかけて、表皮の奥の真皮層まで到達します。ここには、毛細血管がビッシリと張り巡らされています。

二酸化炭素が毛細血管に入り込むと、血管壁から「プロスタグランジンE2」という、血管拡張物質が分泌されます。この物質が血中で増加することで血管が広がり、血液の流れがよくなるのです。

さらに、炭酸浴の大きな特長として、通常のお湯よりも温かく感じる点があります。温度にすると約2度程度です。少しぬるい湯でも温かく感じ、ぬるい湯に長湯することで体の芯まで温まります。

そうして血管が拡張され、血流がよくなることによって、高血圧の改善につながります。

炭酸入浴に血管を広げ、血圧を下げる効果があることは、医学的にも証明されています。実際に、動脈硬化による血行障害の治療などにも取り入れられており、自宅で簡単にできる高血圧対策としてお勧めです。

健やかで美しい皮膚の形成にも役立つ

二酸化炭素は、本来、細胞内でたんぱく質がエネルギーを合成したあとの老廃物です。血液中の二酸化炭素の濃度が上昇すると、体の組織は、老廃物がたくさんあると勘違いし、それを取り除こうと酸素と栄養を供給します。

その働きが拡張した毛細血管で行われるわけですから、血圧の低下だけに留まらない、それ以上の効果が望めます。

毛細血管の血流がよくなると老廃物が除去され、真皮から表皮にかけての細胞の再生が活発化します。皮膚の新陳代謝が促され、肌が若々しくなる効果も見込めます。

さらに、炭酸入浴には、肌を収れんさせる作用があります。収れん作用は、たんぱく質を変性させることで組織や血管を収縮させる働きです。つまり、細胞がピタッとくっついて皮膚のキメを整えたり、毛穴をキュッと引き締めるのです。

このように、炭酸入浴には、血圧を低下させ、健やかで美しい皮膚の形成にも役立つ作用があります。

市販されている炭酸入浴剤は、たいていが弱酸性です。健康な肌は弱酸性ですから、毎日入浴しても負担が少なく、肌に優しいといえます。

お勧めの炭酸入浴法は、夜の長湯です。40〜41度のぬるめの湯に15〜20分つかります。すると全身の体温がまんべんなく上がるので、特定の部位だけでなく、全身の血流がよくなります。

血流が促されると、疲労物質や発痛物質の回収もスムーズに行われるので、疲労回復や肩こりといったさまざまな不調も改善されやすくなります。

また、夜にぬるめの湯にゆっくりつかると、リラックス作用のある副交感神経が活性化されます。そのため入眠しやすくなり、よい眠りにつながります。

逆に朝であれば、42度ぐらいの熱めの風呂に3〜5分、サッと入るのがお勧めです。覚醒作用がある交感神経が活性化されるので、シャキッと一日を始めることができます。

健康で健やかな毎日のために、炭酸入浴を上手に活用してみてはいかがでしょうか。

夜の長湯がオススメ!

この記事は『壮快』2019年4月号に掲載されています。

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