腎臓がん手術後再びリングに!小橋建太さんを支えた「減塩愛妻料理」とは

美容・ヘルスケア

右の腎臓を摘出し手術は成功しましたが、不安と絶望、恐怖が押し寄せてきます。つい1ヵ月前までチャンピオンだった人間が歩くこともできない。ショックでした。徐々に体力と気力が復活し、再びプロレスラーとしてリングに立つ、そこに至るまでの私を支えてくれたのは、妻でした。【体験談】小橋建太(元プロレスラー・Fortune KK 代表取締役)

プロフィール

小橋建太(こばし・けんた)
元プロレスラー・Fortune KK 代表取締役。1990年代後半からプロレスラーとして一世を風靡。数々のタイトルを取得し、「絶対王者」と呼ばれる。2013年5月に現役を引退。現在は、ガンやさまざまなケガを乗り越えた経験を背景に、夢やチャレンジ、あきらめないことの大切さについて発信を続けている。

歩くことができない自分にショック!

13年前の2006年6月、39歳のときのことです。健康診断のエコー(超音波)検査で、腎臓ガンが見つかりました。

当時の私は、「絶対王者」の時代から、一度チャンピオンベルトを失い、再び王者に返り咲いたところでした。

ショックでしたが、立ちすくんでいては何も解決しません。納得できる治療や手術を受けるため、病院を何ヵ所も回りました。幸い、信頼できる医師と出会い、すぐに手術を受けることになりました。

実は、既に予定されていた試合があり、そのあとに手術を受けるつもりでした。試合で病状が悪化しても、自分の体なのだから、自分で責任を取ればいいと思ったのです。

ところが、主治医はこういいました。「自分の責任というけれど、もしものことがあったら、試合を許可した会社や家族にも責任が及ぶんですよ」

私の体や人生は自分だけのものではない、ということに気づかなかったのです。自分の甘さを思い知りました。

ガンのあった右の腎臓を摘出し、手術は成功しましたが、不安と絶望、恐怖が押し寄せてきます。退院後2週間は、家から全く出られませんでした。

ようやく外に出る気になり、200m先のコンビニへ行こうとしたところ、動悸とめまいに襲われ、足がふらついて歩けません。

つい1ヵ月前までチャンピオンだった人間が、歩くこともできない。ショックでした。

すぐに主治医に相談し、プールでの水中歩行を始めました。それ以降、腎機能の変化を細かくチェックしながら、リハビリに励みました。

徐々に体力と気力が復活し、2007年12月2日、私は再びプロレスラーとしてリングに立つことができたのです。

今も食事は塩分控えめで体を冷やさない生活

そこに至るまでの私を支えてくれたのは、妻でした。精神面ではもちろん、体についても細やかにサポートしてくれました。特に、腎臓をいたわるための食事をいろいろ工夫してくれたことは、いくら感謝してもしきれません。

私の場合、体内の老廃物をろ過する腎臓が1個しかないので、腎臓に負担をかけない食事が必要でした。最初はとりあえず、宅配の腎臓病食を取り寄せたのですが、たんぱく質と塩分を控えた味気ない物でした。

例えば、エビフライは、鉛筆の芯くらいの細いエビに、大量の衣がついているのです。箸で持ち上げると、衣が自らの重みでボトッと落ちるほどでした。

見かねた妻が、本を読んだり医師に相談したりして、たんぱく質と塩分を控えつつも、見た目や味のよい食事を作ってくれるようになりました。

温野菜のサラダや、だしをしっかり取った具だくさんのみそ汁は定番メニューです。大豆を混ぜて歯ごたえを出したハンバーグやカボチャコロッケ、カニクリームコロッケ、ポテトサラダなども食卓に並びました。

いずれも塩分は控えめです。塩のかわりに、レモンや酢、香辛料などを使って、おいしい料理を作ってくれたのです。

現在も3ヵ月に1回、腎臓の検診を受けています。腎機能の数値は基準値内で安定しているので、特に食事制限は指示されていませんが、今も塩分控えめの食事を心がけています。

おつきあいで酒宴に出席することはありますが、決して飲み過ぎないようにしています。お酒といっしょに、水を飲むのがコツです。

食事以外の生活でも、腎臓に負担をかけないように気をつけています。

基本は「体を冷やさない」こと。猛暑の夏でも、冷房の温度設定は28度です。また、時間がなくてもシャワーを浴びるだけではなく、必ず湯船につかるようにしています。水を飲むときも、氷を入れたり冷やしたりせず、常温です。

引退後、「高齢者の健康維持を手助けしたい」という思いから、低料金で24時間使用できるスポーツジムを開きました。80代の会員さんもいるジムで、私も体を動かしています。

年を取っても、病気になっても、「終わり」ではありません。前向きな気持ちと行動力、人とのつながりがあれば、新しい自分を作ることができると信じています。

腎臓が健康でも減塩は続けてほしい(あだち江北メディカルクリニック院長 飯野靖彦)

塩分(ナトリウム)をとり過ぎると、血液のナトリウム濃度を一定に保つために血管内の水分量が増えます。その結果、血管にかかる圧力が高くなる(血圧が上昇する)と考えられています。

腎臓は毛細血管が集まった臓器なので、高血圧は大きなダメージになります。

小橋さんの腎臓は現在、健康な状態のようですが、減塩生活はぜひ続けてください。だしや酢、レモン、香辛料を活用して、おいしい料理を作ってくれる奥様は、実によく勉強なさっていますね。感服しました。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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特選街web編集部

1979年に創刊された老舗商品情報誌「特選街」(マキノ出版)を起源とし、のちにウェブマガジン「特選街web」として生活に役立つ商品情報を発信。2023年6月よりブティック社が運営を引き継ぎ、同年7月に新編集部でリスタート。

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