手の刺激で効果を上げるポイントは「圧痛点」を見つけることです。体の悪い部分に対応する手指のツボを刺激すると、ほかとは違う鋭い痛みを感じます。その圧痛点を集中的に刺激することで、その刺激が脳に伝わり、体の不調が改善されていきます。【解説】鹿児島武志(かごしま眼科院長)
解説者のプロフィール
鹿児島武志(かごしま・たけし)
かごしま眼科院長。医学博士。1978年、北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学外科を経て、82年、東京大学眼科入局。85年より三井記念病院眼科勤務。88年、甲状腺の研究で博士号授与。98年、東京・青梅市で『かごしま眼科』開業。的確でやさしい診察・治療・指導で評判となる。
全身の問題からくる眼精疲労にも有効
別記事:「手もみ」のやり方→
私の現在の専門は、眼科ですが、以前は外科を手がけていました。外科では手術後、呼吸や心電図、血圧や補液などを監視・コントロールする全身管理が必要になります。そのため眼科専門医となった今も、「特定の病気」と「全身の健康状態」との関係には強い関心があります。
眼科においても、全身的なアプローチが必要になるケースは少なくありません。
例えば眼精疲労ひとつを取っても、原因はさまざまです。メガネの合わせ方や使い方に問題がある場合もあれば、姿勢の悪さ、首や肩のこり、頸椎のゆがみ、歯のかみ合わせの不具合など、全身の問題が眼精疲労につながっている場合もあります。
以前から私は、西洋医学だけでなく、鍼灸やオステオパシー(骨格のゆがみを整える手技療法)など、全身から体の状態を整える方法に興味を持ち、学んでいました。
そんな中、12年ほど前に高麗手指鍼と出合い、小松隆央先生のもとで手指鍼を学びました。
高麗手指鍼では、両手の手のひらと手の甲に身体全部のツボがあると考えます。手のツボや経絡(気と呼ばれる生命エネルギーの通り道)に鍼やお灸を施術することによって、大きな治療効果を生み出すことができるので、私にとっては、患者さんに手を出してもらうだけで施術できるという手軽さも魅力だと感じました。
残念ながら現在は、時間の余裕がなく、日々の治療には取り入れていませんが、以前は休診時間を利用して患者さんたちに手指鍼を行い、治療効果を実感しました。
例えば、肩こりからくるひどい眼精疲労を抱えていた患者さんは、手にある肩や目のツボに鍼を打つと、肩こりや目の疲れがグンと軽減しました。
こうした経験からも、手の刺激は目の不調の改善に大いに役立つと感じています。
鍼灸師の息子にも施術での活用を勧めている
私自身も、セルフケアに手指鍼を活用しています。私は頸椎に問題を抱えているため、頸部に対応する手のゾーンを探ると、押すと痛みを感じる「圧痛点」があります。その圧痛点を刺激すると、首のこりや痛みが楽になっていくのです。
私の息子は鍼灸師をしていますが、体鍼(体に施術する一般的な鍼灸治療)だけでは限界があると考え、手指鍼も学ぶことを勧めました。彼は現在、体鍼と手指鍼を併用して、効果を上げているようです。
手の刺激は、一般の人たちが自分で行う健康術やセルフケア方法としても有用だと思います。
つまようじのお尻やペンのキャップなど、先端が細いけれども尖っていない手近なものを利用して、手の刺激を行うとよいでしょう。
手の刺激で効果を上げるポイントは、圧痛点を見つけることです。
体の悪い部分に対応する手指のツボを刺激すると、ほかとは違う鋭い痛みを感じます。その圧痛点を集中的に刺激することで、その刺激が脳に伝わり、体の不調が改善されていきます。
なお、目の病気や目の機能低下に対応する目の圧痛点は、非常に小さいので、見つけるのが大変かもしれません。でも、探せばきっと見つかりますので、ぜひトライしてみてください。
また先に述べたとおり、目の疲れや不調は、目以外の部分に原因があることも多いものです。目に対応する中指のゾーンだけでなく、肩や首、背骨などのゾーンも、併せて刺激してみましょう。
圧痛点が見つかったら、ボールペンなどで印をつけておくと、次に手の刺激を行うとき簡単に行えるでしょう。
「全身の縮図」である手のツボを、ご自分の健康管理にうまく活用していただきたいと思います。
別記事:「手もみ」のやり方→