ミネラル豊富なバナナにも、ほとんど含まれていない成分があります。それがナトリウムです。カリウムは体液の濃度を維持・調整しますが、ナトリウムがないとこのしくみは機能しません。そこでお勧めなのが塩バナナです。【解説】福田六花(介護老人保健施設「はまなす」施設長 医師・医学博士)

解説者のプロフィール

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福田六花(ふくだ・りっか)

介護老人保健施設「はまなす」施設長。医師・医学博士。山梨県老人保健施設協議会会長。大学病院勤務時代にストレスと暴飲暴食で93kgまで体重を増やすも、1996年にマラソンと出合い30kg以上の減量に成功。2002年、富士山麓に移住して以降は医師業の傍ら年間30以上のマラソン・トレイルラン大会に出場。これまでに12のレースをプロデュースする。19歳からプロのミュージシャンとしても活動。シンガー&ランニングドクターとして多方面で活躍中。

脱水症・熱中症予防に大事な「塩分摂取」

カリウム豊富なバナナと塩の組み合わせは合理的

私は、ふだんは介護老人保健施設で、医師として、入居者の健康を管理しています。

その傍ら、年間30以上、マラソン大会や山道を走るトレイルランニング(以下、トレラン)の大会に出場。また、そうした大会のプロデュースも手がけています。

塩バナナ」と聞いて、ピンとくる人は、ランナーである可能性が高いでしょう。というのも塩バナナは、2010年に、ランナーの補給食として私が考案した物だからです。

バナナは、簡便な補給食として、昔からさまざまなスポーツ分野で活用されてきました。

まず、バナナはほかの果物に比べて炭水化物を多く含み、栄養価が高いという利点があります。消化がいいため、すぐにエネルギーに変換され、補給食として効率的です。安価で入手しやすいうえ、持ち歩きに便利で片手で食べやすいところも、支持される理由でしょう。

また、バナナには各種ミネラルも豊富に含まれています。特筆すべきカリウムは、リンゴの3倍、ミカンの2.4倍。マグネシウムはリンゴの6.4倍、ミカンの2.9倍もあります。これらのミネラルは、体の機能を正常に維持するのに、欠かせない栄養素です。

カリウムは、ナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧や塩分濃度を調整。体内の水分を保持する役割があります。

また、マグネシウムは、代謝やエネルギー産生にも深く関与しています。筋肉の収縮を制御したり、血圧を下げたり、血栓(血の塊)をできにくくしたりといった働きもあります。

しかし、こうしたミネラル豊富なバナナにも、ほとんど含まれていない成分があります。それが、ナトリウムです。

先に述べたように、カリウムはナトリウムとともに作用して体液の濃度を維持・調整します。ナトリウムがないと、このしくみは機能しません。

また、汗をかくと、ナトリウムが排出されます。すると、体が水分を保持できなくなります。これが、脱水症です。

暑いさなかに脱水症になると体内に熱がこもり、熱中症のリスクも上昇。めまい、失神、筋肉の痛みや硬直、頭痛や吐き気などの症状が現れます。ひどくなると、けいれんや意識障害などのおそれもあるのです。

このように、脱水症や熱中症の予防には、水分だけでなく、ナトリウム、つまり塩分の摂取が欠かせません。

そこでお勧めなのが、塩バナナです。塩と、カリウム豊富なバナナの組み合わせは、医学的にも理にかなっています。暑い季節に最適な補給食なのです。

《福田先生の塩バナナの作り方》

画像: 【熱中症予防】塩バナナは理にかなった食べ物 初心者ランナーに多い足のつり・こむらがえりもミネラル不足が原因

【材料】
バナナ(熟した物)…1本
天然塩…少々
【作り方】
バナナの皮を、幅1.5cmほどむく。むいた部分に塩を振りかけ、皮をむいて食べる。
※1日に1/2~1本が目安。
※時間帯は、栄養補給目的ならいつでもOK。熱中症予防なら昼食前、こむら返り予防なら夕食後に食べるとよい。

足のつりやこむら返りの原因はミネラル不足

足がつって途中棄権するランナーが減った!

私が塩バナナを考案したのは2010年の夏。立ち上げから携わっている、山梨県の「道志村トレイルレース」でのことでした。この大会のコースは、全長約44km。この日、私はコースの中間地点に立ち、医師として救護所を兼ねた補給所の責任者を務めていました。

補給所では、飲料や塩のほか、ランナーが速やかにエネルギー補給できるよう、バナナなどの軽食が置いてあります。

ただ、塩は、皿に盛ってあるのを各自が指でつまんでなめ、バナナは半分に切った状態で渡されるといった提供方法でした。時間的な焦りもあり、たいていの人は、どちらかしか口にしません。特にバナナは、比較的、不人気です。

というのも、走っている間は口の中が渇きぎみになるため、バナナはモサモサして、どうも飲み込みにくいのです。糖質が多いのが裏目に出て、腹に重たく感じられるうえ、甘い物は、食べたあとに口の中がベタベタするので、こうした点も敬遠されます。

また、このころは、2007年の東京マラソン開催や、2009年に日本人が世界最高峰のトレラン大会で3位になったことを受けて、ランナー人口が急増した時期でした。走る楽しさを知ってもらえるのはいいことですが、初心者が準備不足のまま参戦するため、ケガ人が絶えません。

特にこの日は気温が高かったため、脱水症状に陥り、足をつる人が続出。大の大人を、山間の救護所からふもとまで担ぎ下ろすのは、数人がかりで、困難を極めます。

足のつりや、こむら返りなどの原因は、ミネラル不足です。「バナナと塩を、両方とってほしい!」という気持ちから、私は思わずバナナを手にして、皮をむき、塩を振りかけました。

まずは自分で、ひと口食べてみると、これが意外といける。私はふだん、甘い物をあまり食べません。しかし、塩を振ると、バナナがさっぱりした口当たりになり、悪くないと思いました。

そこで、ランナーにバナナを配る際に、塩を振ってから手渡すようにしたところ、「予想外においしい!」と好評を得ました。塩バナナは、こうした経緯で、誕生したのです。

画像: 塩バナナを道志村トレイルレースで配る福田先生(左)

塩バナナを道志村トレイルレースで配る福田先生(左)

この道志村のトレラン大会では、もう10年にわたり、塩バナナを提供しています。私はずっと運営にかかわっていますが、足をつって途中で棄権するランナーは、以前に比べ、減っているようです。

道志村で塩バナナを知った、ほかの大会主催者がこれに倣ったり、ランナーが各地で広めたりした結果、今ではあちこちの大会で塩バナナを見かけるようになりました。考案者として、また一人の医師として、うれしく思っています。もちろん、私自身も、レース前には2~3本の塩バナナを欠かしません。

高齢者の熱中症対策にもおすすめ

先述したとおり、私は介護老人保健施設に勤務しています。入居者のかたは夏でも空調のきいた室内で過ごすうえ、活動量は多くありません。とはいえ熱中症に油断は大敵です。

高齢になると、のどの渇きや体調の変化に疎くなるため、体から水分が失われていることに気づきにくいのです。周りも気づかずに発覚が遅れると、命取りになります。これは家にいる場合でも同じです。

予防には、こまめな水分補給が肝心ですが、お茶やコーヒーなどは逆効果。ミネラルを含まないうえ、カフェインに利尿作用があるので、水分の排出を促すことになります。スポーツドリンクは糖分が多いので、薄めて飲むならともかく、これも、注意が必要です。

しかし、塩バナナといっしょにとるなら、ただの水でも十分熱中症対策に効果があります。

夜中のこむら返り予防にもおすすめ

「夜のおやつ」に塩バナナ

また、塩バナナは、先述したとおり、こむら返りの予防にも有効です。主に運動中や就寝中に、ふくらはぎが急にけいれんを起こして足がつる状態を、こむら返りといいます。こうした筋肉の異常な収縮・硬直を防ぐには、マグネシウムをはじめとしたミネラルを、しっかり補給することが肝心です。

私は外来の診察もしますが、夜中のこむら返りを訴える患者さんには、夜のおやつに塩バナナをとることを勧めています。いい効果があったという声も、少なくありません。

塩はミネラル豊富な天然塩を選んでください。バナナは熟しているほうが、甘みが引き立ちます。高血圧の人は、塩分をとり過ぎないよう気をつけつつ、ぜひ、塩バナナを食習慣に取り入れてみてください。

画像: この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

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