今回は心臓の負担を減らすための特効ツボを三つご紹介します。「隠白」は血流や血液の質がかんばしくないときに反応し「活血」を促すツボです。「復溜」は水分代謝をよくして血圧を下げるツボ、「内関」は不整脈への効果が高いツボです。【解説】佐野泰之(佐野鍼灸院院長)
解説者のプロフィール
佐野泰之(さの・やすゆき)
佐野鍼灸院院長。関西鍼灸短期大学(現・関西医療大学)卒業。2002年、佐野鍼灸院開院。経絡総合治療協会代表理事。16年、『鍼で病に挑む』を出版。栄養コンシェルジュ1つ星取得。19年、世界鍼灸学会(トルコ大会)登壇。
延べ15万人のデータから三つの特効ツボを厳選
私たちの体には、「ツボ」が多数存在します。ツボを利用した治療効果は、WHO(世界保健機関)でも認められています。
私は鍼灸師として、これまで17年間で延べ15万人のかたのツボに鍼を打ち、さまざまな病気や不調を治療してきました。
狭心症や心筋梗塞を起こしたかたや、心不全、不整脈にお悩みのかたも多くいらっしゃいます。病院での治療を受けていても、日常生活につらさや不安があるというかたが多いのです。
また、ほとんどの患者さんが、心臓の不具合だけではなく、不眠や高血圧など、さまざまな不調もお持ちです。
私が行う「経絡古典治療」は、それらの不調を、1回で同時に改善させることができます。
経絡古典治療では、「脈診」を行います。脈には、全身の情報が現れています。これに、患者さんから聞き取った状況や体調を加え、全身に約470個あるツボのなかから、そのかたに適した6~7個のツボを選択するのです。
こうして積み上げてきた膨大なデータのなかから、今回は心臓の負担を減らすための特効ツボを三つご紹介します。
鍼を打たなくても、ツボの周辺を押したりもんだりするだけで、効果が期待できます。ツボは三つ紹介しますが、1日に刺激するツボは一つにしてください。
一つめのツボが、全身の血流をよくする「隠白(いんぱく)」です。
隠白のツボは、左右の足の親指の爪の生え際、内くるぶし寄りの角から足首側に2mmほど離れたところにあります。
手の親指で、左右それぞれの隠白を押してみてください。左右どちらか、奥にビーズのような小さい玉を感じたり、ズーンと響くような痛みを感じたりしたほうを刺激します。
心地よい強さで、ゆっくり10回押します。1日2回、食事と食事の間に押すといいでしょう。隠白への刺激は、胃に食べ物が入っていない時間帯のほうが、効果があります。
心臓の負担を減らす特効ツボ
「隠白」の押し方
隠白
左右の足にある。親指の爪の生え際、内くるぶし寄りの角から足首側に2mmほど離れたところ(写真は右足)。左右のうち、押してみて痛みの強いほうを1日2回、食事と食事の間に10回ずつ押す。
隠白のツボは、血流や血液の質がかんばしくないときに反応し、東洋医学でいう「活血(かつけつ)」を促す特効ツボです。活血とは、血管に弾力があり、栄養素や酸素がたっぷり含まれた血液が、体内をくまなく巡っている状態を指します。
反対に、血管がかたく血流が滞った状態が「瘀血(おけつ)」です。瘀血を活血に変えるのが、脾経という経絡(ツボが連なった道すじ)で、脾経の出発点にあるのが、隠白です。経絡の出発点のツボを井穴といい、効果が非常に強いとされています。
睡眠の質が上がる!横隔膜を柔軟に!
二つめのツボは、「復溜(ふくりゅう)」です。
心臓に負担をかける最たるものは、高血圧です。復溜は、水分代謝をよくして血圧を下げる特効ツボです。
内くるぶしの頂点から、アキレス腱の際に沿って手の指3本分、ひざのほうへ上がったところです。左右の復溜の辺りを押し比べ、痛みが強いほうをゆっくり10回程度押しましょう。
このツボは、寝る前に刺激するのがお勧めです。夜間の血圧が下がり、睡眠の質が上がって朝の目覚めがよくなります。
心臓の負担を減らす特効ツボ
「復溜」の押し方
復溜
左右の足にある。内くるぶしの頂点から、アキレス腱の際に沿って、手の指の横幅3本分、ひざのほうへ上がったところ(写真は右足)。左右のうち、押してみて痛みの強いほうを1日1回、就寝前に10回押す。
最後のツボは、手首の内側にある「内関(ないかん)」です。不整脈への効果が、非常に高いツボです。
手のひらを上に向け、手首の横ジワから手の指3本分、ひじへ向かったところで、手首の中央を走る2本の腱の間にあります。
内関は、呼吸を担う横隔膜を柔軟にするツボです。不整脈のある人は横隔膜がかたく、呼吸が浅くなっています。横隔膜が柔軟に動き、深い呼吸ができるようになると、不整脈のリスクを軽減することができます。
左右の内関を押してみて、かたいほうを優しく10秒ほどもみほぐしましょう。日中、気がついたときに行ってください。
心臓の負担を減らす特効ツボ
「内関」の押し方
内関
左右の手首にある。手のひらを上に向け、手首の横ジワから手の指の横幅3本分、ひじに向かったところで、手首の中央を走る2本の腱の間(写真は右手)。左右のうち、押してみてかたいほうを、気がついたときに10秒間もみほぐす。
余談ですが、内関が「乗り物酔いの特効ツボ」といわれるのは、呼吸が深くなって吐き気を緩和するためです。ですから、頭痛やめまいを起こす乗り物酔いには効きません。
私たちの体には、みずから病気を治す力が備わっています。ツボは、その力を作動させるスイッチのようなもの。心臓の負担を減らす三つの特効ツボを、セルフケアとして活用してください。