JAPOC(ジャポック)とは?
現時点で、花粉症はまだ増え続けています。1998〜2008年の統計で、人口に対し10%患者数が増えています。理由は簡単で、スギ、ヒノキの植林数は年毎に変わるのですが、一番多く植林したスギ、ヒノキが、最も花粉を出すところまで育ってきたからです。これが、あと20年くらい続くわけです。要するに、年変動はありますが、花粉の量はここしばらく多く、患者数も増えるということです。
この花粉によるアレルギーが、花粉症です。
花粉症といえば、アレルギー性鼻炎が一番多く現れる症状。鼻がグスグスします。あるところのデータによると、一人当たり2万円/月ほど生産効率が落ちるとか。3ヶ月間症状が出続けるとして、6万円/年。日本の人口を1億2000万人。その1/3で4000万人。損失は兆円規模に届くというわけです。
これは国家的な損失ですから、国も手をこまねいていません。
環境省、気象庁、農林水産省、文部科学省、厚生労働省などが後押しして対抗策を練ります。しかし、そこが頑張ったから上手くいくというモノではありません。花粉の大量発生を防ぐことも必要なら、花粉がいつ多いのか知らせることも必要です。外出時の防御と部屋に持ち込まないようにする工夫。そして治療法の確立。一つだけでなく、多岐に渡る対応が必要です。
このためにできた、花粉症に取り組む企業・研究機関が中心となり、より効果的な施策をオールジャパンで打ち出す協議会として結成されたのが「花粉問題対策事業者協議会」。通称JAPOC(ジャポック)なのです。
JAPOCは、花粉症を「生成」(育成・森林管理:不稔・少花粉スギ、育成抑制、植え替え、伐採)、「飛散」(測定、予報、情報提供:モニタリング、花粉情報サービス)、「曝露」(除去、防塵、阻止:マスク、衣類、掃除機、空気清浄機、エアコン、カーテン)、「発症」(検査、点眼薬、目薬、洗眼薬、機能性食品、診療)の4段階に分け、それぞれを得手とする企業・研究団体が集まっているというわけです。
JAPOC紹介動画
youtu.beJAPOCマークとは
JAPOCマークというのは、「花粉問題対策事業者協議会」が性能テストをして、そのテストをクリアした場合に用いることができる品質保証マークです。このため、花粉対策としては、このマークが付いていれば、一安心というマークです。

ダイキンのホームページでの使われ方。空気清浄機:MCZ70が認証されていることが分かる。
この他、象印マホービン、ダイソン、パナソニック、等が、認証を取得した製品を販売している。
主には「暴露」のとき使われる製品に付けられます。主には、マスク、衣類、掃除機、空気清浄機、エアコン、カーテンです。これらは、メーカー独自のテスト等をクリアして世に出されているので、特別にJAPOCマークは必要なさそうですが、何故発案されたのでしょうか?
それは、製品によりレベルがマチマチだからです。
例えば、空気清浄機。PM2.5さえフィルタリングするモノが多い方面、それに達していない場合も「空気清浄機」として販売されます。ちゃんとしたメーカーは、日本規格である「JEMAに準拠しています」だとか、アメリカ規格である「AHAMでテストしています」とかのデータをカタログ他でうたいますが、まぁ分かり難いです。
と言うのは、普通の人は花粉サイズを知らない上、それぞれのテスト方法を知らないから、何が保証されているのかが、正確には分かりません。
また、99.999%除去と効能書きがある場合も、テスト条件、テストデータが、その場で全部分かるなどはレアケース。極めて確認し難いのが普通です。
そんな時便利なのが、JAPOCマーク。これは、「花粉のテストをクリアしています」というわけですから、花粉症対策のために買う場合は、あると便利です。

しかも、JAPOCは、テスト内容を決めるときに、医療関係者まで関わっているのがとてもイイです。ともすれば、メーカー決定のテストは、要素を決めて数値で追います。しかし、それは作り手目線であり、消費者目線でないことがよくあります。医療関係者のような、患者を治す、守る立場の視線はとても重要なのです。
クリアするには、テストを受けることが必要
はなはだ便利なJAPOCですが、問題も少々あります。それは認知度の問題です。マークができて5年ですが、国のJIS規格なら強権発動ができますが、なんせいろいろな分野の通貫で、民間。一つの企業のように金の続く限りアピールできるわけではありません。
また、強制的に全社が参加しているわけではありません。つまり、テストを受けていないメーカーもあります。空気清浄機でいうとシャープですね。JAPOC発足当時、シャープはどん底状態でしたから、分からないわけではありません。
このため、まだ弱い品質マークといえます。
また、空気清浄機、掃除機、エアコンは、かなり数値データが多いので、データをきちんと読み取れれば分かりますが、マスク、服などは分かり難い。私は、基準がメーカー別に違うなどハッキリしにくい製品はぜひ取得、表示して欲しいと思います。
マスクは、花粉を通さないようにするため、目をあまりに細かくし過ぎると、呼吸しにくくなります。その上、値段も高くなります。今のマスクは使い捨てが基本ですが、ポケットに入れて数日使うとかになると別の問題。ポケット内でマスクに菌が繁殖、花粉にはやられなかったが病気になった、なんて可能性がないわけではありません。

ユニチャームのマスク「超快適」は、認証テストをクリアした優れもの。しかしマークが小さく目立たない。「認知」と共に「表示」も大きな課題。
衣類の場合は、さらに難易度が上がります。衣類の場合は、布地に工夫をし、JAPOCマークを取得。衣類も、それで保証するということになるのですが、ウェアメーカーによっては、JAPOCマークを使用しないこともあります。
どれもこれも認知が少ないためです。

帝人フロンティアが開発した機能性生地「バランバリア」。繊維が隙間なく並んでいる(すごく密に編んでいるため蜂の巣のように見えます)ため、水平の生地を立たせるとほとんど脱落する。当然、この生地を採用したコートは花粉が付かない。

帝人フィロンティアのボランバリアを使用したクロコダイルのスプリング・ジャケット。商品タグには、「花粉をブロック 花粉付着防止加工を施した素材」とあるが、どれ位の効能があるのかが、客観的に分からない。
まとめ
このJAPOCマークが認知され、うまく回るようになると、そのグッズが花粉対策テストを受けたかどうか、一目瞭然。昔のJISマークのような使い方ができると思います。
今度、もし花粉症対策で、いろいろなモノを購入する場合、JAPOCマークを探してください。より安心して購入、使用できると思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。