エアコンさえあれば、「空調は問題ない」と思っている人はいませんか?結構、多くの人がその様な認識でいますが、大きな誤りです。複合要素からなる空気環境の調整は決してエアコン一台で対応できるものではありません。しかし、それに挑戦し続けているメーカーがあります。ダイキン工業です。今秋、ダイキン工業は、エアコンに「換気」機能を付け加えた「Vシリーズ」を新しくラインナップ。これからの生活への指針を示しました。
コロナと換気対策
新型コロナウイルス騒動が始まって、一年近くになります。結局、インフルエンザと異なり、明確な季節性は見られず、夏でも油断すると患者数が増えました。三密を防ぐとともに、念入りな消毒、そしてできる限り換気をするという対策を年中することとなります。
この中で、結構面倒くさいのが「換気」。真夏日、真冬日、エアコンで部屋の温度を調整した後、窓を開けて換気などしたくありません。そこであげられるのが「空調」でしょう。
空調の6要素とは
この空調という言葉、よく使われますがきちんと理解している人は少ないかもしれません。空調とは温度を制御するだけではありません。「二酸化炭素量」「温度」「湿度」「気流」「空中浮遊物(PM2.5)」「揮発性有機化合物(VOC)」の6要素を整えることを言います。この要素を整えるのが空調家電です。
「二酸化炭素」は「換気扇」。「気温」は「エアコン」。「湿度」は「加湿器」「除湿機」。「気流」は「扇風機」「サーキュレーター」他。「空中浮遊物」「揮発性有機化合物」は「空気清浄機」他です。
このため、完全に空調しようとすると、もう大変。いろいろな空調家電で部屋を埋めることになります。エアコンが空調家電の代表製品でもありますが、必ずしも完全空調ができるわけではありません。
日本住宅における換気の実際
今の日本の住宅は気密性が高く、北欧並みの住宅も数多く存在します。このため、多くの場合24時付けっ放しにする電動ファン付きの換気扇が付けられています。これは法律でも定められていることです。
ところが、これ、あまり良くないのです。
理由は2つ。1つ目の理由は、外の温湿度の空気がそのまま入ってくるので、部屋の温湿度が調整された空気と違うと言うことです。エアコンへの負荷がかかるので、電気代がかかるのです。2つ目の理由は、昔と違って個室が当たり前。家の中での空気の流れが悪いのです。
個人の家は、快適でなければなりませんし、その「快適さ」が人によって差がありますので、理論や法律だけで律することはできません。
コロナ禍でダイキンがエアコンに追加したもの
「換気機能」付きを拡大
こんな中、ダイキンは、エアコンの機能の強化に取り組みます。部屋に持ち込める空調家電の数には限度がありますし、エアコンは全部の部屋に付いています。エアコンの機能が上がれば、それだけいい商品ということができます。
その使命を帯びたモデルが、ダイキンのフラッグシップ「うるさら」シリーズです。このモデルには、「気温調整」だけでなく「湿度調整」ができます。エアコンはもともと「除湿」機能はありますので、「加湿」機能をつけたのです。それに加えて付けたのが「換気」。あまり注目されていませんが、2世代目から搭載されています。エアコンで換気すると、部屋の空気との違和感を止めることができますので、換気扇で外気を取り込んだような問題は出ません。
今ドキの住宅は、あまり風の流れを考えて設計されていません。昔の日本の住宅は、外と家の境がわりとラフでした。家の細かいチリは、外に吐き出しますし、ふすまを開けると全部屋換気できるようになってもいました。エアコンがない時代、夏を涼しく過ごすためには風を利用するしかなったわけです。
しかし、今の日本家は、北欧並みの密閉度。そして部屋を多くする必要があります。このため換気は行き届きません。コロナ禍ではできれば避けたい環境。コロナウイルスが侵入したら、蔓延しそうな環境です。
そんな中でも、人が長時間いるところには、エアコンがあります。ダイキンは、エアコンあるところに「換気」ありを考えたわけです。流石にフラッグシップの「うるさら」を全ての部屋にというわけにはいきません。
このため、今回は、「換気機能」を拡大して付けられるようにしたのです。
「うるさらX(Rシリーズ)」は継続。寝室、子供部屋を想定した「うるさら mini(Mシリーズ)」。そして、新しくお求め易い「Vシリーズ」。これ以外に、ハウジングエアコンの「うるるとさらら天井埋込カセット形シングルフロータイプ」「うるるとさらら床置形」にも着きます。
「うるさら」にはもともとありましたが、「うるさらX」からリモコンに「換気ボタン」が搭載されます。
自動換気ができる「Beside(ビサイド)」に注目
さてコロナの関係で、注目を集めている換気ですが、もともとは二酸化炭素量を正常値にするためです。二酸化炭素は多くなりすぎると人間は死にますが、許容範囲内でも、多くなると脳の働きが低下します。人の多い会議室では、ポーッとして頭が働かなくなるのと同じです。
自室での長時間知的活動ができない人は、部屋の二酸化炭素量を見直した方がベター。私も屋根裏部屋を書斎にしていた時、二酸化炭素量を測定してみたのですが、予想以上の速さで増えました。数時間で知的活動に相応しくないレベルとなりました。(某社の空気センサーで確認)
温度、湿度は肌感覚で感じることができますが、空調のその他の要素、「二酸化炭素量」「空中浮遊物」「揮発性有機化合物」は分かりにくい。これを可視化できるのが「空気センサー」です。
ダイキンの場合は、「Beside(ビサイド)」という名のIAQセンサー&AIコントローラーが商品化されています。私は、できる限りの人にこの空気センサーを使って欲しいと思います。
なぜかというと、センサーの多くはエアコン本体に装着しているからです。空調を必要な人がいる場所ではなく、少し離れた場所のデータで作動しているのです。
この「Beside」を使い、人に近いエリアの情報で、エアコンを作動させることができると話が違ってきます。より精度の良い空調が可能になるわけです。
まとめ
空調家電の今後は?
エアコンは、空調家電のエンターテイメント。人にわかりやすい空調です。しかしそれは、空調の全部をカバーするわけではありません。
空気環境も含め、人の生活環境が今後好転する可能性はあまりありません。どんどん悪くなる一方でしょう。
今まで、気温メインで対応してきた空調ですが、それだけでは不十分になるでしょう。また、きちんと空調するためには、いろいろな空調家電を使いこなす必要もあります。先日、ご紹介したパナソニックのエアコンと空気清浄機との連携など一つの例です。
今までの空調家電が一芸家電だったのに対し、今後は複合的空調家電が当たり前の時期になると思います。しかし「換気」は元来エアコンとは合わない要素ですので、他メーカーもいろいろなテストをしながら確認する必要があります。また、別の手を打ってくるかもしれません。
今しばらく、空調家電は新しい提案が続く時代になりそうです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き