ここではHSP的な状態の有無を判断するためのセルフチェックを紹介します。以下の26項目のうち自分に当てはまるものをチェックしてください。チェックした項目の数が多いほど、HSP的な気質を持つ可能性があります。例えひとつの項目しか該当しなくても、それが極端に強い場合は、HSP的かもしれません。本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。
HSPとして生きていくには
自分を認め、許し、受け入れて、HSPとして生きる覚悟を持とう
人生の目的は、自分を知ることであり、変わり続けることです。変わりたいのに変われないのは、マイナス感情が邪魔しているためです。
感情には理屈がないので、感情を抑えつけたり、放置したり、ためたりしていると、手に負えない複雑なものとなり、心の中で暴れ出します。
感情は抑えつけると暴れ出してしまうのですが、恐れずに向き合い、問いかけ、受け止めてあげると落ち着きます。
「自分なんか」「頑張ったのに」「うらやましい」「イライラする」などは、自分の本当の気持ち(本音)ではなく、それを隠している不平不満なので、「わかったよ」と自己承認してあげればよいのです。
人に役立とうとする頑張りや、自分の弱いところを隠そうとして我慢すること、「大丈夫だから」「何でもない」と心の扉を閉じていると、心が悲鳴をあげてしまいます。
頑張らなくていい、我慢しなくていい、そのままでいいと、今の弱い自分を認めて、許して、受け入れてあげることです。
ダメでもいい、負けてもいい、マイナスでもいいと自分にOKを出してあげるのです。
思い切って弱いところや恥ずかしいところをさらけ出す勇気が必要です。
小さい時に思い込んだり、刷り込まれたりして、自分はこうだと決めた自分のパターンをどのようにしたら変えられるでしょうか。
新たな自分に生まれ変わるために、本当にイヤな思いをさせられ、悩み苦しみ疲れた果てに、頑張ることや我慢することを「もうどうでもいい」と手放すチャンスがやってきます。
今のパターンから脱して、次のステージに行くには、これまで身につけていたものや手にしていたもの、隠していたものなどを手放して身ひとつで旅立つ覚悟が必要です。ありのままの自分を、そのままさらけ出してしまうのです。
これだけは言えなかった、見せたくなかった、触れられたくなかった自分の本音を伝えて、その反応は相手に託してしまいましょう。
「そんな勇気はとてもない…」と迷っているうちに病気や事故、事件が起こって強制終了させられてしまう前に、自分を幸せにする、ラクにすると決めて、思い切ることが大切です。
心の境界線とは
心の境界線を意識するだけで、生きづらさが少し解消される
「自分は自分、他人は他人」、
「他人が何を言おうと自分のことは自分で決める」、
「相手のもの(感情など)は相手に返す」。
これが自分と相手に境界線を引くということです。
親に愛されなかったという感覚は、現代の家庭環境では特別なことではなくなりました。それは、あなたの責任なのではなく親自身の問題なのであり、小さい時に親に刷り込まれたことや思いこんだことは、本来のあなたの本心ではなかったはずです。
自分の感情と同じように、親との関係も向き合うことを避けていると、いつまで経っても解決されません。とことん向き合い、お互いの違いを受け入れ、そして手放しましょう。
困難に陥って八方塞がりとなり、味方がひとりもいない状況になった時、もう限界であると感じた自我は、自分の意識を守るために「心の安全装置」を働かせるのです。
イヤなものを見ない・聞かない・触らない(抑圧)、病気になり休む(逃避)、自分の不安を人のことにする(投影)、人に八つ当たりする(置換)、作り笑いやカラ元気を出す(反動形成)、他人事として見る(同一視)、自分を正当化する(合理化)、現実を受け入れない(否認)などです。
これらの自我の防衛が長期にわたると自我を保てなくなり、意識を解離させ、もうひとりの自分を作り出します。
生まれた別人格は、自分の悲しみ・恐れ・怒りの感情を担ってくれている救済者なのですが、放置されると、本来の自分をいじめるようになったりします。解離した自我は不安定で混乱しており、リストカットなどの自己破壊行動を引き起こします。
カタカムナ理論とは
困難に直面して自分がつぶれた時に、自我はゼロを突き抜け”反転”する
私自身も困難にぶつかり、窮地に陥りましたが、その解決方法は、「相手を立てる」ことでした。これはつまり、自己防衛をやめて相手の喜ぶことをする、という方法でした。
これはすぐに効果を表し、周囲ともうまくいくようになりましたが、さらなる試練があり、とことん自分の自我(エゴ)を見返すことになり、どうしようもない自分を認めて無意識の涙を流した時にお腹の底から湧き上がる喜びの感情が出てきました。
それ以来、泉から湧き上がるようにプラスの感情が常に出始め、感情の浮き沈みがなくなりました。後にこれが”へそが湧く”という体験だったことや、「カタカムナ理論(*1)」のゼロポイントを通しての”反転”だということに気がつきました。
この理論によると、生命は見える世界(陰)と見えない世界(陽)が結合しており、陰と陽が半分ずつ繋がって重なり合うトーラス構造(*2)を作っていて、その中心に陰と陽が反転するゼロポイントがあると説かれています。
本当の自分(陽)は見せかけの自分(陰)をなくした時に表れ感じることができるというのです。
*1 「カタカムナ」とは、縄文時代以前に書かれ、1949年に日本で発見された謎の古文書で、宇宙の成り立ちや時の流れの意味を解き明かしています。
*2 トーラスとはドーナツ状の円環体のことで、物質世界でエネルギーを生み出す基本構造です。食べ物や動物、人間、宇宙にいたるまで、すべてはこのトーラス構造をしていて、中心点には必ず磁力線が通過するゼロポイントが存在しているとされ、ここがエネルギーの生まれる場所であると考えられています。
「本来の自分」に向き合おう
自分の「影」の部分を認め、受け入れるとラクに生きられる
HSPの提唱者であるアーロン博士がユング心理学から学んだように、私も日常の臨床においてユング心理学にもとづく性格分類を用いて、クライエントの性格を把握しています。
ユングは「ひとりの人間の中にはいくつもの面があり、本来のその人は環境などのさまざまな条件によって抑えこまれている場合がある」と考えています。人は社会に適応して生きていくために、本来の自分の性格以外に、「社会的性格」を作っていきます。
また、親から「こうあるべきだ」と教えられた人としてのあり方がもうひとつの性格になることもあり、幼い頃の体験から「もっとこういう人になりたい」と演じてきた性格が自分らしくなることもあります。
本来の自分を理解するために自分の心の内面と正面から向き合い、対話できている人がどのくらいいるでしょうか。
本来の自分、つまり「こうしたい」「こうなりたい」という心からの願いをわからないまま、世の中の常識に従った”幸せ”をステレオタイプに求めて生きていると、いつかは苦しい思いをしてしまうことになります。
うわべの幸福感に惑わされずに、本当に自分らしい人生を手に入れるためには、まず本来の自分をしっかりと見つめ、その本質を理解することが必要です。
自分の本心や本音を見つめるのは本当に苦しい作業です。
なぜならば、それは自分の中に長く閉じ込めてきた人には見られたくない、触れられたくない心の傷に関係しているからです。
スムーズな社会生活を送るために
自分は内向的? 外向的?
人は自分の興味や関心がどこに向いているかで性格が大きく異なります。ユングはそれが自分自身の内側に向いていれば内向的、社会や自分以外の他者など外側に向いている場合を外向的としています。
自分が自然体で健康に生きていくためには、自分がこのどちらのタイプかを見極め、無理をして反対のタイプを演じないようにすることが大切です。
さらにユングは、人が心に何らかの刺激を受けた時に、心がどういう働きをするかで心の機能を「思考と感情」、「感覚と直感」という4種類に分けています。
「内向と外向」の場合と同じように、他の機能も自分が最もよく使っている機能と相対する機能を使おうとすると、自分らしくなくなります。その場合には、相対しない他の2つの機能で補うと、バランスがとれてきます。
生産的でスムーズな社会生活を送るためには、この4つの心の機能がうまく連携するとよいのですが、どの機能も不十分だったり、ひとつの機能が突出してバランスがとれなかったりする場合には、異なる主機能を持つ人たちと交流し、お互いをサポートしあい、相対する機能を高めていくと生きやすくなります。
イライラしてしまう理由は?
苦手な人には自分の「影」が投影されている
誰か特定の人に対して、はっきりとした原因もなく不快になったり、イライラしたりする場合には、自分の中にある「こうありたくない」と抑えこんでいる影の部分をその人の中に見ているのです。
例えば、人見知りが強く、引っ込み思案のHSPが、「こんな自分は嫌いだ」と思い、無理して社交的に振る舞っていた場合、人見知りをするおとなしい人を見ると、イライラしたり嫌ったりして、「もっと明るくしろよ!」と心の中でつぶやくのです。
その人が好きでないなら、無視して通りすぎればいいわけなのに、その人と同じような自分が「影」として自分の中に隠れているので、どうしても引っかかってしまい、否定的になってしまうのです。
時にはこの「影」が暴走して、その人を傷つける言葉や態度をとってしまうことも起こります。そして、心にもないことをしてしまった自分を責めてしまいます。「影」をさらに抑えこんだとしても、それは苦しくなるばかりです。
自分の中に隠れている「影」は、否定するのではなく、それを認め、向き合い、対話をして受け入れていくとラクになっていきます。
周囲の人に心を許せなかったり、自己否定に悩んでしまう時は、まず自分にある「影」を見定め、「どうしたの?」「今、何が望みですか?」などと話しかけてみましょう。
HSPの診断テスト
HSPセルフチェックをやってみよう
ここではHSP的な状態の有無を判断するためのセルフチェックを紹介します。以下の26項目のうち自分に当てはまるものをチェックしてください。チェックした項目の数が多いほど、HSP的な気質を持つ可能性があります。例えひとつの項目しか該当しなくても、それが極端に強い場合は、HSP的かもしれません。
1 いつも自分を責めたり、否定したりしてしまう
2 小さな音や雑音が気になることがある
3 いつもビクビクしていて、すぐに焦ってしまう
4 一度、悩みを抱えると抜け出せなくなる
5 部屋をきれいに片付けることできない
6 怒りをうまくコントロールできない
7 自分で決めるより他人に決めてもらうことが多い
8 昔のつらい出来事を急に思い出すことがある
9 誰かに監視されたり、悪口を言われたりしていると感じる
10 他の人には見えないが、自分だけが見えるものがある
11 人に本音を語れず、友達も少ない
12 大人数の集まりや飲み会が苦手
13 他人が望むとおりにしようとして疲れる
14 相手の感情に自分の気持ちが左右されることが多い
15 すぐ人を好きになったり、恋人に依存したりしてしまう
16 子どもの頃から親に支配されていると感じる
17 複数の仕事や業務を同時進行することができない
18 急な予定変更があると混乱してしまう
19 突然名前を呼ばれると、びっくり仰天してしまう
20 小さな失敗でも激しく動揺してしまう
21 怒っている人やトラブルを見ると落ち込む
22 たわいもない会話や雑談が苦手
23 仕事で注意されると自分を全否定されたように感じる
24 電磁波や化学調味料がとても気になる
25 寝つきが悪く、ぐっすりと眠ることができない
26 芸術や音楽に深く心をひかれる
HSPと脳の関係
HSPの特徴でもある「疲れやすさ」「マルチタスクが苦手」は、脳の疲労が原因であると考えられます。
運動などはしていないので、肉体的には疲れていないけれど、さまざまな刺激に対する過剰反応で脳が疲れてしまうのです。つまり身体は疲労していないのに、常に疲労感を感じている状態です。
疲れを認識するしくみは、脳にある帯状回皮質の前部が関わっています。この場所は理性と感情を中継する部位であり、自律神経や痛みの中継でもあります。
HSPが人間関係や感覚のオーバーロードなどで慢性のストレスを抱えると、帯状回皮質の前部が活性を低下させます。すると、疲労感が発生し、自律神経の働きが乱れ、痛みも感じやすくなってしまうのです。
HSPは身体や脳の内側からの情報を敏感にキャッチし、過剰に反応するために、神経やホルモンが必要以上に活動し、抑制がきかず慢性疲労状態に陥りやすいのです。
脳の慢性疲労を軽減させるためにも、HSPは自分のことをよく知り、頭の中に舞い散る思考や感情を鎮めるために自分の身体感覚に焦点を当てたマインドフルな休憩をとることが大切です。
■イラスト/森下えみこ
■本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
HSPに関する知識や理解は、心の専門家たちにおいてさえ、まだまだ不十分であり、敏感すぎる自分にどう対処してよいかわからずに困っている人たちがたくさんいます。本書は、HSPの性質からもたらされる日常生活の生きづらさについて、具体的説明や対策などについて、脳科学的知識を入れてなるべくわかりやすく解説しています。
著者のプロフィール
長沼睦雄(ながぬま・むつお)
十勝むつみのクリニック院長。日本では数少ないHSPの臨床医。平成12年よりHSPに注目し研究。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立子ども総合医療・療育センターにて14年間小児精神科医として勤務。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っていた。平成28年9月に開業し、HSP診療を中心に診療し、脳と心(魂)と体の統合的医療を目指している。
▼十勝むつみのクリニック(公式サイト)」
▼専門分野と研究論文(CiNii)