何げなく繰り返している毎日の「生活動作」にも、ちゃんと生理学的根拠があります。つまり、当たり前のことを、老いや障がいがあるからこそ当たり前にできることが、日常生活の「介護の基本」なのです。【解説】三好春樹(生活とリハビリ研究所代表)
執筆者のプロフィール
三好春樹(みよし・はるき)
1950年生まれ。生活とリハビリ研究所代表。1974年から特別養護老人ホームに生活相談員として勤務したのち、九州リハビリテーション大学で学ぶ。理学療法士(PT)として高齢者介護の現場でリハビリテーションに従事。1985年から「生活リハビリ講座」を開催、全国で年間150回以上の講座と実技指導を行い、人間性を重視した介護の在り方を伝えている。『関係障害論』(雲母書房)、『生活障害論』(雲母書房)、『ウンコ・シッコの介護学』(雲母書房)、『介護のススメ!希望と創造の老人ケア入門』(ちくまプリマー新書)など著書多数。
▼三好春樹(Wikipedia)
▼生活とリハビリ研究所(公式サイト)
▼@haruki344(Facebook)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『イラスト図解 いちばんわかりやすい介護術』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
イラスト/ひらのんさ
食事、排泄、入浴の3大介護は
日々の生きがいを生み出す大切なもの
介護は人生に関わるものです。その人にとって何が幸せか、何が生きがいかに関わるからです。若い頃の幸せや生きがいは、10年後、20年後に実現したい理想像でした。では高齢者、しかも障がいをもって要介護になった人にとっての生きがいは何でしょうか?
もちろん高齢でも10年後の高い目標を持っている人もいるでしょう。孫の将来が生きがいの人もいるでしょう。それらを実現するためには、毎日の生活が保障されていることが必要です。
つまり、食事、排泄、入浴といった生活習慣です。ではそれらは、幸せや生きがいのための単なる手段に過ぎないのでしょうか……。いいえ、それらは日々の小さな幸せなのです。
毎日の食事を、おいしいと感じて味わい、快適な排泄ができ、「あ〜、極楽極楽」と気持ちよくお風呂に入ること。それは生きていることを肯定することでもあるのです。
だから、食事、排泄、入浴の3大介護とは、お年寄りに「こんな体でも生きていてよかった」と思ってもらうための大切なものなのです。
どんな食事をするか、どんな排泄をするか、どんな入浴をするかで、その人の尊厳が守られるかどうかが分かれるのです。
3大介護の充実は
人生を豊かにする
食事
食事は単なる栄養補給ではなく、最後まで楽しく口から食べてもらうことです。
入浴
入浴で大切なことは、特殊な浴槽や機械浴ではなく、普通の浴槽に入ることです。
排泄
排泄のケアは後始末ではありません。トイレの便器で排泄できるように工夫しましょう。
日々の生活を楽しむ
リハビリをしてよくなってから人生を楽しもうではなくて、今、ここでできることをまずやりましょう。カラオケだって呼吸訓練といえますし、晩酌だって飲食訓練だととらえて、楽しみながらやってみることが大切なのです。
なお、本稿は『イラスト図解 いちばんわかりやすい介護術』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
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