【キヤノンPowerShot ZOOMレビュー】クラウドファンディングで話題の望遠特化型デジカメ その実力は?

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今、全カメラメーカーが力を注いでるのが、特化型のコンデジ。勢いでスマホカメラに圧されていますが、クラウドファンディングMakuakeで話題になったコンデジがCanonのPowerShot ZOOMです。ズーム機能に特化したモデルで、私も大いに期待していたためワクワクしながらレポート。使ってみてわかったメリット・デメリットをご紹介します。

キヤノン「Power Shot ZOOM」をレポート

今年は「カメラ」という分野にとってかなり痛手な年でした。もともとスマホのカメラ機能に押され、コンパクトカメラ市場の売上がガタ落ち。カメラメーカーの収益が厳しくなっているためでしょうか、カメラ雑誌の老舗「アサヒカメラ」「カメラマン」は休刊。ドイツ ケルンで70年の長きに渡って行われてきたフォトキナは今年2020年5月にコロナの影響で2022年に延期とされていました。しかし、延期から一転、展示会自体に幕を下ろすことになりました。デジタル写真が氾濫する中、本当に寂しい感じになっています。

とにかく今、全カメラメーカーの課題は、消滅しつつあるコンパクトデジカメ(コンデジ)分野の収益をどう埋めるのかということです。今のコンデジは非常によく、古いスマホを使っている人もは、これを買ったら最新のスマホにもカメラで勝ると太鼓判を押せる出来です。ただ、その優位性は、永遠に続くものではありません。

このためコンデジ分野の流行は「特化」型です。総合的にいいのではなく、スマホの弱い「望遠」、「夜景」「ムービー」などを特化させ、特徴を持たせたデジカメをぶつけてきます。漫然と強調したのでは、スマホの勢いに負けてしまいますので、ユーザーに「すごい」と思わせるレベル、今までにないレベルまで特化させます。

今回は、11月に発売されたキヤノンの特化型デジカメ「Power Shot ZOOM」をレポートします。

PowerShot ZOOM

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クラウドファンディング「Makuake」で、箔付けデビュー

最近、新しいものを試す時、クラウドファンディングを使うメーカーは多いのですが、今回もその例にもれません。「Makuake」で行われた応募には、999人が参加、100万円の目標金額の約30倍、3000万円の応援購入があったのでした。

キヤノンのPower Shot ZOOMは、名前の通り、ズーム機能にポイントを当てたデジカメです。通常デジカメでズームというと無段階ズームが当たり前です。しかし、多くの場合、使われるのは端の倍率が使われます。例えば、80~200mmだと、80mmもしくは200mmしか使わない人が多いのです。逆な言い方をすると、多くの見たいもののズーム倍率は決まっているのです。キヤノンは、今回その倍率を100mm、400mm、800mmとしました。それがボタン一つで変わるのです。

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人間が裸眼で見た時は、ほぼ50mmレンズの倍率と同じです。100mmは2倍ですね。イベントに双眼鏡を持っていかれる人はお分かりのことと思いますが、イベント、スポーツ観戦などで扱い易いのは8倍、400mmです。これ以上になると、動きについて行きにくくなったり、ちょっとしたはずみに対象を見失ったり、「観る」ことに集中するのではなく、「見る行為と格闘する」という感じになります。

800mmはその倍ですが、100、400mmが光学ズームなのに対し、こちらはデジタルズーム。デジタルズームは、デジタル補正しても、画像が粗れることがあり、ある意味、おまけと考えてもいいでしょう。

そして、この映像を「望遠鏡」「カメラ」「ムービー」で楽しもうというのが、このモデルのコンセプトです。安価なスマホは35〜70mm程度なので、400mmズームは魅力的。しかも望遠鏡として使えるところもいいです。

実際に使ってみてわかったメリット・デメリット

持ってびっくりした、ショット時のホールディングの悪さ

本体は実にスマートな形をしており、それだけで欲しくなるくらいです。カメラホールディングは、高倍ズームに強いムービーカメラと同じ鷲掴み、筒型を採用。Power Shot ZOOMはワンタッチで切り替えられます。遠くを見る望遠鏡としても使え、見たものを写真、もしくはムービーとして記録できる。機能を限った分、小型軽量なので、ポケットに入れてどこでも持ち歩ける。また、WiFi、Bluetoothに対応しており、ネットとの連携もバッチリ。

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これが仕様のあらましです。軽いし、スマホの弱点もカバーしてくれそうという雰囲気がプンプンしますよね。キヤノンから貸し出してもらい使ってみました。

使ってみた感想は、半分期待通りで、半分期待ハズレでした。期待外れの一番は、ショット時のホールディングです。

基本はムービーと同様の鷲掴み型と書きました。しかしムービーの場合、正確には鷲掴みとは違いますね。サイドにあるベルトに手をいれ、鷲掴み「風」にホールディングするが正しいです。そうして、親指でスイッチ類、人差し指でズーム機能の調整をします。純粋な鷲掴みの場合、中指、薬指、小指の3本指と親指の付け根母指球でモノをホールディング。他の指は添えるだけです。これはこれで、実に安定するのですが、母子球でホールディングしていると、親指を自在に動かすことはできません。操作に、親指と人差し指を使わなければならないムービーは、このためベルトを付け、ベルトで支えることにより親指と人差し指を操作に使える様にしてあるのです。

一方、新モデルPower Shot ZOOMはベルトを持ちません。このため、親指と人差し指を操作に使える様にしようとすると、中指、薬指、小指で上側からのみでホールディングする必要があります。Power Shot ZOOMの重さは145gと軽いので、それも可能です。しかし、無意識にはしない握り方です。熟知しないと使い難いことが挙げられます。

コンセプトはいいのです。多くの人から支持されています。しかし、仕様が追いついていないカメラ。すごくスマートに見えるが、使うと「おっとっと」となるシーンが続出する感じです。もう一つの問題はシャッターが、親指押し込み式ということです。ムービーの親指スイッチは「動画用」であり、「写真用」ではありません。どこが違うかというと、写真はショットの瞬間が最も大事ということです。私は、カメラのシャッターの切り方は、火縄銃で引き金を引くのと同じだと教わりました。極意は「霜が降りるが如く」だそうです。霜なんていつ降りるのかわかりません。要するに、それだけ静かにブレなくということです。このためカメラは、掌で支え、逆の手の人差し指で上から下へ動かします。決まると実に動かない方式です。

これに対し、持っている手の親指を使うというとは、親指の一部でもある母子球の筋肉が動くということです。なおかつ、ホールディングしている下ではなく、なんの支えもない前方向へ押し込みます。本体が動かないわけがありません。要するにショット時にぶれるのです。それは、三つ指上側ホールディングでも同じです。親指の動きは人差し指に比べ、正確度に欠ける上、強いのです。ぶれます。

最大の欠点。Power Shot ZOOMは、ショット時にぶれやすいカメラといえます。確かに、三本指で持つ、ずらして持つなどで、ブレを軽減することは可能です。しかしあ、それをユーザーに強いるモデルはいいモデルとは言えないと思います。

まずは何に使うかを決めた方がいい

懸念点として上げておくべきは、稼働時間。フル充電で、望遠鏡で使った場合、映像表示時間:約70分(常温+23℃)、撮影可能枚数:約150枚(CIPA規格準拠)、動画撮影時間:約60分(常温+23℃、Wi-Fi接続なし)また、1回の撮影可能時間は9分59秒です。ただ途中でも充電可能です。
この充電可能をどうとらえるのかでも意見は分かれるところでしょうが、携帯バッテリーを使ったとしても、動かしにくくなりますので、やはり単独で稼働できる時間は大切です。

問題は、望遠鏡で70分持たないことです。望遠鏡を見るのは疲れますので、実際には延々覗き続けることはありません。このため、サッカーの試合 : 90分でも、まるまる使えると思います。しかし、それはムービー、写真なども使うと、どんどん使える時間が短くなってきます。何をしたいのかにもよりますが、メインの使い方を決めてからもう一度スペックを見直すことをおすすめします。

その他の部分は合格点以上

しかし、それ以外はかなりのものです。ほぼ合格点。特にスタイリングと、ポケットに突っ込んでおいても、すぐ取り出せるすべすべした表面はいいです。ファインダー液晶も個人の好みを言わせてもらうと、もう少し明るめの方が好きなのですが、まぁ合格です。

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最後に

その分、ボタン配置が残念でありません。

本体についているボタンは、人差指操作となっている「on」「メニュー」ボタンと親指操作用の「写真」「ムービー」。私思うのですが、「on」「メニュー」を親指操作にして、「写真」「ムービー」を人差し指側にするのはどうでしょうか?使い勝手は数段上がるよう思うのですが・・・。

また、こうも言えます。 Power Shot ZOOMは「望遠鏡」「ムービー」「カメラ」の順に使い勝手が良いと。決定的瞬間を撮るのに注力する人でしたら、一眼レフと望遠の組み合わせを選ぶでしょう。

しかし「望遠鏡」「ムービー」「カメラ」をうまく組み合わせたことは大いに評価されるべきです。ちょっと使いにくいとしても、ちょっとしたニーズ、いつでもポケットは的確にニーズを掴んでいると思います。

今年もあとわずか。私が言いたいことはただ一つ。来年もがんばれ、がんばれ!カメラメーカー!

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。

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