「パッククッキング」とは?
災害時に、ライフライン(水・ガス・電気)が制限された環境下で、カセットコンロ、耐熱性ポリ袋、お湯を沸かした鍋があれば、温かい食事を手軽に作ることができる「パッククッキング」。ポリ袋に食材を入れてパック(封じ込める)して、湯せんする調理方法です。ごはん、おかず、おやつまで作ることができます。基本知識とごはんの炊き方は、関連記事をご一読いただけると嬉しいです。
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食材をポリ袋にパックして湯せん調理するから「パッククッキング」!
【メリット】
◆1つの鍋で同時に複数の料理(ごはん、おかず)を作れる
◆1人分ずつ袋に分けて作れば、食べたい量と柔らかさを調整できる
◆袋に食材が入った状態で器に盛り付けられ、食器を洗わなくて済む
◆ポリ袋の中で調味するので手を汚さず衛生的で片付けもしやすい
◆湯せん調理に使った水(湯)が汚れないので再利用できる
◆災害時だけでなく、日常の時短レシピ、単身者の少量調理、アウトドア料理に応用できる
【必要道具】
◆耐熱性食品用ポリ袋(高密度ポリエリレン製、耐熱温度100℃以上、厚さ0.01mm以上のもの)
◆カセットコンロ・ガスボンベ
◆湯せん用の鍋
◆鍋底に敷くための耐熱皿または布巾(ふきん)

さまざまな食品用湯せんポリ袋が売られています!

耐熱性ポリ袋は、素材(高密度ポリエチレン)、耐熱温度、厚さを必ずチェック!
【初心者向きの食材・メニュー】
・白ごはん、おかゆ、炊き込みごはん
・缶詰、乾物、ドライパック、レトルト食品など、短時間の加熱でも食べられるもの
・日持ちする野菜・果物(玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、りんごなど)
【気をつけたい食材・メニュー】
・パスタ、うどん、そばなどの麺料理(作れるが茹で具合の見極めが難しい)
・生肉、生魚など(食材の中心まで火を通さないと食中毒の心配がある)
・酒蒸しやオイル蒸しなど(酒・油を大量に使って加熱すると袋の中の温度が100℃を超え、破れる可能性がある)
【調理ポイント】
◆お米なら1合まで、おかずは2〜3人分までの少量ずつ袋に分けて作る
(コツをつかむまでは1人分ずつ作るのがおすすめ)
◆食材を入れたポリ袋の中の空気を可能な限り抜き、袋の上の方でしっかりと結ぶ
◆炊飯は水から入れて沸騰させ、加熱・蒸らし時間を守る
(加工食品を使うおかずの場合は沸騰してからの加熱でOK)
避難生活ではタンパク質や食物繊維の不足に要注意!
災害時の避難生活で懸念されるのは、栄養バランスの偏りによる体調不良です。比較的、口にしやすい炭水化物(おにぎり、パン、麺類など)中心の食事が続くと、タンパク質・ビタミン・ミネラル・食物繊維が不足しがち。さらに、節水を心がけるため水分不足に陥りやすく、ストレスや運動不足も重なり、便秘や低体温、筋力低下、脱水症状などのリスクが高まります。特に高齢者は冷たいごはん(おにぎり)や食事が飲み込みにくい場合もあり、栄養不足を招きやすく注意が必要です。
そこで、避難生活で使える限られた食材(常温保存できる缶詰など)で、タンパク質や食物繊維を補うことが可能な「おかず系パッククッキング」のレシピをいくつかお伝えします。実際に試作して高齢の家族に食べてもらい、好評だったものを紹介します。
タンパク質補給レシピ(主菜)
レシピ①サバ缶のトマトジュース煮込みチリコンカン風
《材料》2〜3人分
・さばの水煮缶:1缶(190g)
・トマトジュース(100%濃縮還元・無塩):1缶(185g)
・蒸し大豆(ドライパック):1袋(60g)
・乾燥野菜(玉ねぎ・にんじん・キャベツ):ひとつかみ(10g)
・にんにく:1片(5g)
・ローリエ:1枚
・こしょう:少々
・唐辛子(輪切り):少々(好みで加減を)

サバ缶は味噌煮・醤油煮でもOK(少し濃い味に仕上がる可能性あり)、鮭缶やツナ缶も◎
《作り方》 調理時間:25分
①にんにくの皮をむき、キッチンバサミでざっくり刻む。ローリエの葉にキッチンバサミで切り込みを入れる。

煮込み時間が短めなので、ローリエに切り込みを入れておきます。
②ポリ袋に材料すべてを入れ(トマトジュースは最後に加えると飛び散らない)、袋の中の空気を抜きながらねじり上げ、上の位置でしっかりと結ぶ。

ポリ袋でパックしたら、優しく揺すって調味液を混ぜます。
③鍋の容量の1/2程度の水を入れ、鍋底にポリ袋を保護する耐熱皿または布巾を敷き、鍋蓋をして強火にかける。沸騰したら②を入れ、吹きこぼれないよう鍋蓋を少しずらし、火加減を中火〜弱火(フツフツと小さい泡が出てくる状態をキープ)にして10分程度加熱。火を止め、鍋蓋をきちんと戻した状態で10分ほど蒸らす。

沸騰したら鍋の蓋をずらして、吹きこぼれを防ぎつつ、水分の蒸発も少なくします。
④ヤケドに注意して、トングなどでポリ袋を取り出して結び目を外し(キッチンバサミで切ってもOK)、皿に袋のまま盛り付ければ完成!

袋を開けたとたん、にんにくの香りが立ち食欲をそそります。
サバ缶とドライパック大豆はそのまま食べられる加工食品なので加熱時間は、乾燥野菜が戻り、にんにくに火が通ればOK。好みや状況(ガスボンベの残り具合)で調整を。私は10分湯せん+10分蒸しの20分で調理しました。長く煮込むと、全体の味がまとまるように感じます。実は、私も家族もサバ缶特有の魚臭さが苦手なのですが、にんにく・ローリエ・唐辛子を加えることで軽減され、「トマトスープ感覚で食べやすい」「骨まで食べられる」と評判は上々でした。

普段のおかずとしても食卓へ出せるレベル。オリーブオイルをひと回し&乾燥パセリを散らせば、より本格的!
レシピ②大豆ミート入りマーボー高野豆腐
《材料》2〜3人分
・高野豆腐(凍り豆腐):小さめ12個(34g)
・大豆ミート(乾燥・ミンチタイプ):大さじ2(10g)
・乾燥野菜(玉ねぎ・にんじん・キャベツ):ひとつかみ(10g)
・麻婆豆腐の調味液(レトルト食品・トロミ粉別添え):1袋(3人分・27g)
・水:カップ2+1/5(240ml)
*乾燥野菜→生の玉ねぎ、にんじん、キャベツをキッチンバサミやピーラーでカットして加えても◎
*春雨を加えても美味しいと思います!(その場合はトロミ粉は不要)

高野豆腐は水分を含むとボリュームアップします。入れすぎ注意!
《作り方》 調理時間:25分
①材料をすべてポリ袋の中へ入れ(麻婆豆腐のトロミ粉も入れる)、袋の中の空気を抜きながらねじり上げ、上の位置でしっかりと結ぶ。袋の上から手でよく揉み込み、味を均一になじませる。

袋の上から揉んで、調味液をなじませます。
②鍋に湯を沸かし(容量の1/2程度の水を使用)、鍋底に耐熱皿または布巾を敷き、鍋蓋をして強火にかける。沸騰したら①を入れ、鍋蓋は吹きこぼれないよう少しズラし、火加減を中火〜弱火にして15分間加熱。火を止め、きちんと蓋をした状態戻して10分間蒸らす(高野豆腐のパッケージに戻し時間の目安があるので、加熱+蒸らしで目安時間になるようにする)。
③ポリ袋を出し、袋のまま皿に盛りつけたら完成!

麻婆豆腐の調味液を使うと味が濃いめに仕上がるので、好みで量を加減してください。

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高野豆腐の定番メニューである「和風だしの含め煮」も湯せん調理で作れます(高野豆腐に粉末だしが添えられ、レシピも書いてある場合が多い)。年配の家族がいる場合は、含め煮の方が喜ばれそうです(私の母親も「普通にだしで作る方が美味しいのに」と…苦笑)。含め煮の場合は、乾燥野菜や干しシイタケを加えて野菜不足を補いましょう。逆に、高野豆腐になじみが薄い子どもや若い世代には麻婆アレンジが食べやすいかも。ポリ袋を2つ用意し、一方は高野豆腐の含め煮、一方は麻婆アレンジのハイブリッド調理も、パッククッキングなら可能です!