ヒトは、「自分はこうなるのではないか」と思って行動すると、その予言や期待どおりの結果を出しやすくなります。努力をほめられたヒトは、「努力する自分」を実現するためにがんばるようになります。期待されたとおりの結果を出せることを、「ピグマリオン効果」といいます。ピグマリオン効果について、書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』著者で文学博士の齊藤 勇さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
齊藤 勇(さいとう いさむ)
文学博士。立正大学名誉教授、日本ビジネス心理学会会長。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は対人・社会心理学。「それいけ‼ココロジー」(日本テレビ)の監修・コメンテーターを務めるなど、心理学ブームを牽引。『図解 心理分析ができる本』(三笠書房)、『図解雑学 見た目でわかる外見心理学』(ナツメ社)、『イラストレート 心理学入門』(誠信書房)など、著書・監修書多数。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/桔川シン、堀口順一朗、栗生ゑゐこ
相手の能力を引き出す?「ピグマリオン効果」
意欲を引き出すには、「努力」や「過程」をほめる
相手のモチベーションをアップさせるには、「叱る」より「ほめる」ことが効果的。
でも、ほめすぎは、逆効果になることもあります。
才能をほめられすぎると、困難な課題に挑戦する意欲を失ってしまうのです。意欲を引き出すには、「努力」や「過程」をほめるように心がけることが必要なのです。
▼才能ではなく、努力をほめる
心理学者ドゥエックは、ほめ方が子どもに与える影響を実験で調べた。
(1)子どもたちを2グループに分けて問題を解かせ、一方のグループに対しては「才能」をほめ、もう一方のグループに対しては「努力」をほめた。
(2)次に、両方のグループに、「もう一度同じ問題」と「新しい問題」のどちらを解きたいか聞いた。
「予言の自己成就」の心理効果によって、期待されたとおりに結果を出せる!
ヒトは、「自分はこうなるのではないか」と思って行動すると、その予言や期待どおりの結果を出しやすくなります。
この効果は、「予言の自己成就」と呼ばれます。
努力をほめられたヒトは、「努力する自分」を実現するためにがんばるようになります。
期待されると成果が出やすい
また、相手に期待をかけて成功を信じることも、能力を開花させるヒケツ。
心理学者ローゼンタールは、成績とは関係なく、「将来、あの生徒たちは成績がアップする可能性が高い」と教師に報告しました。
すると実際に、その生徒たちの成績はアップしたのです。
つまり、期待されて信じてもらえる人は、予言の自己成就の効果でよいパフォーマンスを発揮するのです。
このように、期待されたとおりの結果を出せることを、「ピグマリオン効果」といいます。
逆に、相手に期待していないような態度で接すると、本当にダメな結果が出やすくなります。これを、「ゴーレム効果」といいます。
▼ピグマリオン効果の実験
ローゼンタールがおこなった「ピグマリオン効果」の実験。
小学校の教師に、「能力予測テストの結果」として、成績がアップしそうな生徒のリストを見せた。
教師が、「成績がアップする」という期待をこめて指導すると、実際にその生徒の成績はアップした!
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。心理学に興味をもって、「ちゃんと勉強してみよう」と思っても、専門書には専門用語が多く出てくるので、「むずかしい」と感じる人も多いのではないでしょうか? 本書は、これまで積み重ねられてきた心理学の研究を、知識ゼロでも楽しく読めるように、イラストや図解も豊富に使い、やさしく丁寧に解説しています。