天気が悪くなったと思ったら、突然氷が降ってくる…。この氷は「あられ」または「ひょう」といいます。「ひょう」と「あられ」の違いとは? 「ひょう」「あられ」の正体について著者で気象予報士の中島俊夫さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
中島俊夫(なかじま・としお)
気象予報士。1978年生まれ。2002年、気象予報士資格を取得。その後、大手気象会社や気象予報会社で予報業務に携わるかたわら、資格学校で気象予報士受験講座の講師も務める。現在は個人で気象予報士講座「夢☆カフェ」を運営。気象予報士の劇団「お天気しるべ」を主宰。著書に『イラスト図解 よくわかる気象学』シリーズ(ナツメ社)など。2021年NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で助監督(気象担当)を務める。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/桔川シン、堀口順一朗、北嶋京輔、栗生ゑゐこ
なぜ氷が空から降る? 「ひょう」「あられ」の正体
直径5mm以上の氷の粒が「ひょう」
天気が悪くなったと思ったら、突然氷が降ってくる…。この氷は、直径5mm未満なら「あられ」、直径5mm以上なら「ひょう」といいます。
ひょうやあられは、大気の状態が不安定な、上昇気流が強い積乱雲で生まれます。大きくなって落下してきた氷晶は回転して球体となり、0℃以上のところを通るときに、その表面は溶けて水になります。
回転しながら落ちて球体になった氷晶が、雲の中を上下して大きくなって降ってくる!
その後、上昇気流に乗って0℃以下のところまで戻されると、表面の水が再び凍ります。そして、また表面に雲粒(過冷却水滴)がつき、大きくなって落下。上昇気流が強ければ、また上へ戻ります。これをくり返し、氷晶はあられ、ひょうへと成長していきます。
ちなみに、雲粒がついて凍ったところは白く、表面の水が凍ったところは透明になります。このため、ひょうの断面は木の年輪のような模様になるのです。
ひょうは、カボチャくらい大きくなったこともあります。これほど大きなひょうだと、地上に落ちるときの速さが時速100kmを超えることもあります。当たって負傷するのを防ぐため、ひょうが降ってきたら屋内に避難するようにしましょう。
▼ひょうの発生
ひょうは、積乱雲の中を上下して成長する。
▼ひょうの断面
ひょうの断面は、木の年輪のような模様になっている。
(1)ひょうに雲粒がくっつく。
(2)雲粒が空気を含んで凍り、不透明な層をつくる。
(3)さらに付着した雲粒が溶けてから凍り、透明な層をつくる。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。最近は、天気予報で「ゲリラ雷雨」「線状降水帯」「猛暑」など、気象災害に対して警戒を呼びかける言葉をよく聞くようになりました。でも、天気のしくみを知るのに必要な気象学って、数式とかたくさん出てくるんでしょ? …などのように思ってはいませんか? そんなことはありません。「晴れる」「雨が降る」という、とても身近なことなのに、そのしくみについて知らない方はきっと少なくないはず。そんな天気を知るための最初のきっかけに、本書は非常に適しています。興味をもったページから読めるように工夫しているので、順番に読んでいく必要はありません。大人はもちろん、小さなお子さんも楽しめます。簡潔な文章と豊富なイラストや写真を使ってわかりやすく説明しています。