繰り下げ受給とは、年金の受け取りを通常の受給開始年齢である65歳より遅らせることで、受給額を増やせる制度のことです。また、受給額が減額されるものの、60歳から受け取る「繰り上げ受給」も可能です。「年金はいつから受け取るのが最もお得か?」を、ひとりひとりが考えて決める時代がやってきたと言えます。
[別記事:【終活】お金・住まい・健康の3つがポイント!楽しい老後を送るための必要な「活」の準備→]
本稿は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
年金繰り下げ受給の改正内容を確認する
2022年4月に行われた法改正により、年金の「繰り下げ受給」の上限年齢が75歳に引き上げられました。繰り下げ受給とは、年金の受け取りを通常の受給開始年齢である65歳より遅らせることで、受給額を増やせる制度のことです。
66歳以降の任意のタイミングで年金請求書を提出すれば、その手続きが行われた時点で増額率が決まり、受給が開始されます。
繰り下げ受給の年金増額率
開始年齢 | 年金増額率 |
---|---|
66歳 | 8.4〜16.1% |
67歳 | 16.8〜24.5% |
68歳 | 25.2〜32.9% |
69歳 | 33.6〜41.3% |
70歳 | 42.0〜49.7% |
71歳 | 50.4〜58.1% |
72歳 | 58.8〜66.5% |
73歳 | 67.2〜74.9% |
74歳 | 75.6〜83.3% |
75歳 | 84.0% |
年金の受給開始年齢を検討する
年金は「繰り上げ受給」という形で60歳から受け取ることもできますが、受給額が減額されるというデメリットがあります。ただし、仮に寿命が79歳までだとすると、生涯の総受給額は60歳から受け取る場合が最も多くなります。
また、75歳から受け取りを開始して受給額を増やしても、数年で寿命を迎えてしまうと、65歳から受け取り始めた場合よりも総受給額は少なくなります。繰り下げ受給をすれば必ず得をするというわけではないことを念頭に置いておきましょう。
受給開始年齢別 年金総受給額の損益分岐点
60歳から受給
寿命が79歳の場合に最もお得になる
65歳から受給
80歳以上なら60歳受け取り開始の受給額を超える
70歳から受給
寿命が80〜91歳の場合に最もお得になる
75歳から受給
寿命が91歳以上の場合に最もお得になる
年金の未納期間があった場合のフォロー方法
追納
学生納付特例や年金保険料の免除、納付猶予などを受けた未納期間がある場合、10年以内であれば、過去にさかのぼって保険料を納められます。追納を行うと、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます。
任意加入
60歳時点で保険料の納付期間が40年未満の場合、国民年金に65歳まで任意加入することで、受給額を満額に近付けられます。ただし、年金を繰り上げ受給している人や、厚生年金保険に加入中の人は対象外です。
付加年金
国民年金第1号被保険者(自営業者やフリーランス等の人)および任意加入被保険者は、定額保険料に付加保険料(月額400円)を上乗せして納めることで、受給する年金額を増やせます。付加年金額(年額)は、「200円×付加保険料納付月数」で計算されます。2年以上受け取ると、支払った付加保険料以上の年金が受け取れることになります。
●本記事で紹介している情報は、2022年7月15日現在のものです。これ以降の法・制度改正等には対応しておりませんので、あらかじめご了承下さい。
●本記事で紹介している情報をもとに行動したうえで発生したトラブル・損害につきましては、一切の補償をいたしかねます。自己責任の範囲内で検討・実践してください。
■監修/小泉 寿洋(終活カウンセラー1級・ファイナンシャルプランナー(AFP))
■イラスト/宮坂希
※この記事は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)に掲載されています。