以前は詳しい情報が少なかったこともあり、正しい診断を受けるまでに時間がかかりました。ヘバーデン結節は徐々に進行し、第2関節にも同じような症状が起こってきます。これは、ブシャール結節と呼ばれていて、私の場合、両手の薬指で発症してしまったのです。【解説】キャシー中島(タレント・ハワイアンキルト作家)
プロフィール
キャシー中島(きゃしー・なかじま)
タレント・ハワイアンキルト作家。 ハワイマウイ島出身。3歳から日本で生活し、1969年にモデルとして芸能界デビュー。俳優の勝野洋さんと結婚後もテレビタレントとして活躍するかたわら、ハワイアンキルトの第一人者としてパッチワークの教室を開催。現在、全国に6ヵ所のキルトスタジオを開き後進の指導に励んでいる。
きっかけは小指の第1関節に覚えた違和感
私が「ヘバーデン結節」になったのは、今から20年以上も前のことです。
最初は右手の小指の第1関節に違和感を覚え、しばらくすると、その関節が腫れてきました。「突き指かな?」と思って湿布をしても全くよくならず、しだいに曲がってきたのです。
当時は、今のようにインターネットで調べることもできず、なんの病気かはっきりとはわかりません。最初は、リウマチを疑ったのですが、指の第1関節には起こらないということで、よくわからないまま「そのうちよくなるわね」とほうっておいたのです。
次に、右手の人差し指の第1関節が痛くなり、半年後にはコブのようにふくらんできました。
私はそれでも、病院には行きませんでした。何かのひょうしに指をぶつけると激痛が走りますが、「触らなければなんともないのだからきっと大丈夫」としばらくそのまま放置していたのです。
そのころの私は、主婦として子育てをしつつ、タレント業に加えてキルト作家の活動もあって大忙し。お医者さんにかかる時間がなかなか取れなかったのです。
そうこうする間、症状はどんどん進み、ほかの指の第1関節も痛くなってきました。最後に残った親指の痛みはとりわけひどく、耐えきれなくなった私は、とうとう病院へ駆け込み、そのとき初めてへバーデン結節と診断されたのです。
担当の先生によると、原因は加齢とのこと。私まだ40代だったのに(笑)。
ほかの原因として、遺伝があると伺いました。実は、私の母は50代でリウマチを疑って温泉治療に出かけていました。それはリウマチではなく、へバーデン結節だったのでしょう。私は、母の体質を受け継いでしまったのです。
指が自由に動かせなくなると、不便ですし不安でいっぱいでした。特につらかったのがファンのかたとの握手。右手をギュッとつかまれると、飛び上がるほど痛い!申し訳ないとは思いつつ、握手しなくて済むように大げさに包帯を巻いたものです……。
ただ、不思議なことに、私のライフワークであるキルトを縫っているときだけは痛みが出なかったのが幸いでした。
ヘバーデン結節には、これといった治療法はないというので、症状は徐々に進行していきました。そして、第2関節にも同じような症状が起こってきます。これは、「ブシャール結節」と呼ばれていて、私の場合、両手の薬指で発症してしまったのです。
大事なのは早い段階で診察を受けること
病気のことは50代半ばまで公表しませんでした。60代半ばにヘバーデン結節について明らかにして、取材を通して自分の体験を語るようになりました。
例えば以前、いいサプリメントがあると聞き、早速取り寄せて飲んでいました。それがなんと昆虫のアリを粉末にした物だったのです!気持ち悪いと思いながらも飲み続けましたよ。確かに痛みは軽くなりましたから……。
そして、最近試しているのが、ダイズイソフラボンの成分を含んだサプリメントです。
飲み始めて1ヵ月で効果を実感し、3ヵ月ほど経った現在、すべての指の痛みが消えたのです。以前のように、どこかに指をぶつけても痛むことはなく、指が普通に使えるのでほんとうにありがたいです。
(別記事:ヘバーデン結節・バネ指に「大豆薬膳」レシピ→)
そのほかにも、毎朝自己流の指の体操をずっと続けています。1本ずつ指をゆっくりと反らせるだけの簡単な方法です。少しでも血行をよくしたいという一念でしたが、関節の変形を抑える効果があったようです。
(別記事:ヘバーデン結節・バネ指の保存療法「テーピングと指反らし体操」→)
しかし、なにより大事なのは、できるだけ早い段階で専門医の診察をきちんと受けることです。
はっきりとした病名がわかれば、効果的な治療を受けられます。これは、私自身の経験から確かにいえます。以前は詳しい情報が少なかったこともあり、正しい診断を受けるまでに時間がかかりました。その分だけ、症状も悪化したのです。
指に違和感がある、なんとなく痛みがある、そんなときはどうか、なるべく早くお医者さんを訪ねてください。お話しした私の経験が、少しでも多くの皆様のお役に立てば幸いです。
早期発見・早期治療を心がけることが大切(キッコーマン総合病院副院長 田中利和)
以前よりはよくなりましたが、ヘバーデン結節についての認知度はまだまだです。最近でも、「年のせいだからしかたがない」と誤解して、適切な治療を受けないケースがあります。
キャシーさんがヘバーデン結節を公表されたことは、多くのかたにこの病気を知ってもらう貴重な契機となりました。へバーデン結節は、早期発見・早期治療が大切なのです。
また、この病気は女性ホルモンと密接な関連があります。キャシーさんの場合と同様、女性ホルモンと似た働きをするダイズイソフラボンの摂取は非常に有効です。
さらに、日ごろから指をあまり酷使しないように努め、負担を軽減するテーピングを活用するといいでしょう。