厚生年金に加入して働きながら年金をもらえる「在職老齢年金」には、月収と年金月額の合計が47万円を超えると年金月額が減額される、というルールが設けられています。厚生年金に加入しなければ適用されませんが、国民健康保険料の方が高くなる場合や、配偶者の保険料の支払いが必要となる場合があります。
[別記事:【終活】お金・住まい・健康の3つがポイント!楽しい老後を送るための必要な「活」の準備→]
本稿は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
老齢厚生年金についてチェックする
年金は基本的に、65歳から受給できるようになります。
ただし、厚生年金に1年以上、国民年金に10年以上加入している1961年4月1日以前に生まれた男性、および1966年4月1日以前に生まれた女性は、60〜64歳までの間に最大5年間、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができます。
特別支給の老齢厚生年金は、事前に送付される年金請求書を提出することで、受給の手続きを行えます。
特別支給の老齢厚生年金の対象者
●1961年(昭和36年)4月1日以前に生まれた男性
●1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれた女性
●老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
●厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
●生年月日に応じた受給開始年齢に達していること
在職老齢年金に関する年金減額のルールを確認する
60歳の定年後も、厚生年金に加入して、働きながら年金をもらえます。この年金は「在職老齢年金」といいますが、月収と年金月額の合計が一定の基準額を超えると、超えた金額の半分が年金月額からカットされます。
以前の基準額は、60〜64歳が28万円、65歳以上が47万円でしたが、2022年4月の制度改正で60〜64歳も47万円になりました。特別支給の老齢厚生年金の受給者は、改正により以前よりも働きやすくなったといえるでしょう。
●月収+年金月額が47万円を超えない場合
[月収 20万円]+[年金月額 10万円]=[合計 30万円]
→ 47万円以下のため全額支給
●月収+年金月額が47万円を超える場合
[月収 40万円]+[年金月額 10万円]=[合計 50万円]
▶︎(50万円 – 47万円)× 1/2 = 1.5万円
→ 年金月額が1.5万円カットされる
収入別 在職老齢年金の支給額早見表
厚生年金に加入せずに働くデメリットを知る
前述したように在職老齢年金には、月収と年金月額の合計が47万円を超えると、年金月額が減額されるというルールが設けられています。
そこに大きな不満を感じるなら、60歳以降は厚生年金に加入しないという選択肢もあります。厚生年金に加入しなければ、在職老齢年金のルールによって年金を減額されることはありません。
ただし、厚生年金に加入しないと、下記のようなデメリットがあることを覚えておきましょう。
【健康保険に加入する必要がある】
厚生年金に加入していない場合、自分で国民健康保険に加入する必要があります。国民健康保険は、前年の収入と家族構成などによって保険料が決まります。前年の収入が高い人は、厚生年金の保険料よりも国民健康保険の保険料の方が高くなるかもしれません。
【配偶者の保険料の支払いが必要】
厚生年金に加入していると、扶養している配偶者の国民年金の保険料を払う必要はありません。逆に、厚生年金に加入していないと、配偶者の国民年金の保険料を払わなければならない可能性があるので、注意が必要です。
●本記事で紹介している情報は、2022年7月15日現在のものです。これ以降の法・制度改正等には対応しておりませんので、あらかじめご了承下さい。
●本記事で紹介している情報をもとに行動したうえで発生したトラブル・損害につきましては、一切の補償をいたしかねます。自己責任の範囲内で検討・実践してください。
■監修/小泉 寿洋(終活カウンセラー1級・ファイナンシャルプランナー(AFP))
■イラスト/宮坂希
※この記事は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)に掲載されています。