今や社会現象となっている大ヒットアニメ『鬼滅の刃』。原作漫画の累計発行部数は12月時点で1億2000万部を超え、10月16日に公開された劇場アニメ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、公開から1カ月半で興行収入が275億円を突破。歴代1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)に迫りそうな勢いです。視聴者には「戦闘シーンが圧巻だった」と話す人も多く、作品の見どころの一つと言えるでしょう。なぜ、そこまでの戦闘シーンが制作できたのか。そこで、アニメ「鬼滅の刃」を制作した企業「ufotable(ユーフォテーブル)」のすごさについて解説します。

執筆者のプロフィール

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河嶌太郎(かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。Yahoo!ニュース個人では「河嶌太郎のエンタメ時報」を執筆、オーサーコメンテーターとしても活躍中。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、家電、ガジェット、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。
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鬼滅で評判の「戦闘シーン」

劇場版を鑑賞した人が口々に揃えるのは、「戦闘シーンがとにかくすごかった」という感想です。筆者も視聴していますが、原作の漫画だと回を挟んで省略されている部分までもが補われて、美麗なアニメーションで描かれています。原作よりも内容が濃く描写されているのがアニメ「鬼滅の刃」の特徴だといえます。

漫画原作の作品がアニメ化された場合、通常は漫画の2話~4話ぐらいがテレビアニメ1話に相当します。一般的に、アニメのほうが情報量が多いからです。しかし、「鬼滅の刃」の場合、漫画の第1話がそのままアニメ第1話として描かれています。漫画だと5分ぐらいで読めてしまう内容が1話24分に伸ばされており、原作にはない戦闘シーンの細かな動きや、原作には描かれていない登場人物の内面描写などが足されているのです。

この、原作にはない情報をアニメに詰め込む性質は、1話だけでなく全話にわたって行われています。現に、既にテレビアニメ26話と2時間の劇場アニメが既に展開されていますが、これでも全24巻中の8巻の途中までしか映像化されていません。

参考までに、同じジャンプ作品原作のアニメ「ハイキュー!!」では、テレビアニメ1期最終回の25話終了時点で、原作8巻がほぼ終わっています。一方の「鬼滅の刃」は、テレビアニメ26話終了時点では原作6巻分に過ぎません。「鬼滅の刃」のほうが1話多いにもかかわらず、2巻分の差があることを考えると、「鬼滅の刃」のアニメがいかに濃密に描かれているかがわかると思います。

こうした原作以上の情報量が詰め込まれているのが、アニメ「鬼滅の刃」ならではの魅力といえるでしょう

職人集団「ufotable」とは

こうした濃密な演出を可能にしているのは、アニメを制作した会社「ufotable(ユーフォテーブル)」が、優れた内製文化を持っているからと実は言えます。

まずそのすごさは、作中の脚本のクレジットにも現れています。劇場版もテレビアニメ版もスタッフロールを見てもらえばわかりますが、脚本の名義が「ufotable」と会社名になっているのです。

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これはどういうことかというと、社内の制作スタッフがチームでシナリオを内製しているのです。通常は、脚本はフリーの脚本家に外注される場合が大半で、名義も個人名が入ります。それができる複数の人材を社内に抱えているのが、ufotableの特徴だと言えます。監督は外崎春雄さんで個人名義ですが、外崎監督もufotable所属の社内スタッフなのです。

脚本からCGまで内製する

そして、特に戦闘シーンを支えるCGを自社で作れるのもufotableの強みです。通常、CG描写は手描きのセルアニメとは作り方が全く異なり、ノウハウに乏しい老舗アニメ制作会社も少なくありません。そのため、CGパートはCGを専門とするアニメ制作会社に外注することも珍しくないのです。ところがこの点でもufotableは自社に制作スタッフを抱えており、内製できるというわけです。

この2つの要因が、原作以上に濃密な心情描写と戦闘描写を実現しており、ヒットに繋がったのではないかと考えられます。他にも映像制作における大抵の専門スタッフが自社にいるのもufotableの強みといえます。

一般的に、外注によって様々なパートを様々な企業や個人で分担制作する文化が根強いのがアニメ業界の特徴です。その中で、こうした内製文化は他のアニメ制作会社にあまり例がないことなのです。

画像: 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開中PV youtu.be

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開中PV

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アニメ1話の制作に1年

こうした内製文化の持つ強みは、テレビアニメ1話にも現れています。実はこのアニメ第1話の制作に、1年近くかけていると他誌のインタビューで明らかにしています。一般的にテレビアニメの制作には企画段階から2年かかると言われています。

脚本があがり、そこから絵コンテがあがる、「プリプロダクション」という段階が終わるまで大体1年半ぐらいかかり、通常は実際のアニメーション制作にかけられる時間は半年そこらしかないのが通例です。こういった中で、1話の制作だけに1年かけたというのは異例なことです。

実はこれこそが、内製文化のufotableだからこそ可能なことといえます。外注した場合、外注先を1つの作品に1年以上も縛り続けることは難しいです。ところが、自社スタッフが多い場合は、連携が普段から密に取れるだけでなく、会社の採算が取れる範囲であればこのように時間をかけることが可能になります。

また、アニメ制作会社は、1つの時期に2作品以上の制作ラインを持つところも少なくありませんが、ufotableではこうした社内の体制をほぼ1つに絞り、社内スタッフ全員で一つの作品の制作に取り組む会社として知られています。こうしたufotableの企業文化が、アニメ「鬼滅の刃」の大ヒットを支えたことは間違いないでしょう。

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