2016年9月にリニューアル発売され、累計4000万個を販売するヒット商品となった「明治 ザ・チョコレート」。明治が持つ専門性や先進性を注ぎ込んだ“スペシャリティチョコレート”であり、カカオの豊かな味わいを楽しめることで評判だ。商品誕生の背景となった明治の地道な取り組み、商品開発の裏側、チョコレートにかける思いについて、担当者に訊いた。

カカオのさまざまな味わいを堪能できる大人のためのスペシャリティチョコレート

<キーパーソンはこの人>
株式会社 明治
菓子商品開発部 スペシャリティチョコレート担当 
佐久間悠介さん

株式会社 明治
菓子商品開発部 専任課長 スペシャリティチョコレート担当
山下舞子さん

チョコレートの形状で味わいが変化する

コンビニやスーパーのチョコレート売り場に、ひときわ異彩を放つ商品が並んでいるのをご存じだろうか。

クラフト調の紙箱にカカオポッド(カカオの実)のイラストが大きく描かれ、いかにもインスタ映えするパッケージ。

価格は、税抜き230円前後と、一般的な板チョコの倍だ。

その商品の名前は、「明治 ザ・チョコレート」。

2016年9月にリニューアル発売されると、スイーツ好きの女性を中心に人気が沸騰。現在までに累計4000万個を販売したヒット商品だ。

商品開発を担当した山下舞子さんは、商品のコンセプトについて次のように話す。

「明治 ザ・チョコレートは、明治の持つ専門性や先進性を注ぎ込んだ“スペシャリティチョコレート”です。原料のカカオは、産地のみならず栽培や収穫の方法など、製造工程にも徹底的にこだわりました。カカオの豊かな味わいを楽しめる大人の嗜好品と位置付けています」

現在は8種をラインアップ。カカオの産地や味わいの方向性は大きく違う

画像: 8種のラインアップは、カカオの含有量が47〜70%と大きく異なる。味わいは「花香」「果実香」「ビター感」「甘み」「ミルク感」「酸味」「ナッツ香」という7要素のチャートで表現され、パッケージにも記載されている。

8種のラインアップは、カカオの含有量が47〜70%と大きく異なる。味わいは「花香」「果実香」「ビター感」「甘み」「ミルク感」「酸味」「ナッツ香」という7要素のチャートで表現され、パッケージにも記載されている。

実は、明治 ザ・チョコレートの“初代”は、2014年9月に発売されている。

初代もこだわりのカカオを使用したスペシャリティ商品だったが、その認知が広まらず、ヒットにはならなかった。

そこで、翌年1月には早くもリニューアルのプロジェクトが開始された。

画像: 2014年に発売された初代「明治 ザ・チョコレート」。カカオへの強いこだわりをパッケージに表現したが、ヒットには至らなかった。

2014年に発売された初代「明治 ザ・チョコレート」。カカオへの強いこだわりをパッケージに表現したが、ヒットには至らなかった。

リニューアルに当たって山下さんたちが意識したのは、チョコレートの新しいスタンダードを作ること。

そのために、従来の商品開発の常識を捨てた。

それが表れている例の一つが、チョコレートの形状だ。

「チョコレートの基本は板チョコで、これは変えられない要素です。けれど、これまでの板チョコのサイズだと一度に食べきるのが難しいため、3枚に小分けしました。そのうえで、1枚をいくつかのエリアに分け、それぞれに異なる模様を入れることで、さまざまな味わいや香りを楽しめるように工夫しました」

確かに、約6センチ×4センチの板チョコには、ミニブロック型やドーム型、ギザギザ型といった模様が入れられている。

例えば、ミニブロック型は苦みが軽減されて口当たりが軽くなるし、ギザギザ型はカカオの香りがより際立つという。

つまり、同じチョコレートでも、口に入れたときに違った味わいが楽しめるようになるわけだ。

筆者は、取材前の試食では、このことを意識していなかった。

そこで取材後、模様と味わいの関係に注目して試食したところ、確かに味の印象が変わった。

ウイスキーやワインの味がグラスの形状で変化するのと似ていて、なるほどこれはおもしろいと感じた。

画像: 同じチョコレートでも、大きさや角の丸みなどによって、口に入れたときに違った味わいが楽しめる。

同じチョコレートでも、大きさや角の丸みなどによって、口に入れたときに違った味わいが楽しめる。

良質なカカオを安定的に確保する

明治 ザ・チョコレートは、主原料であるカカオ豆の仕入れにも大きな特徴を持つ。

その背景には、「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」というユニークな取り組みがある。

「MCSは、明治が2005年ごろから取り組んでいるカカオ農家支援活動です。明治の社員がペルーやエクアドル、ブラジルといったカカオ産地に滞在。カカオ豆の収穫量を増やす栽培方法や、高品質につながる独自の発酵法などを農家さんに教えて、実践してもらっています」

こう話すのは、MCSの担当者である佐久間悠介さん。

産地で生産者や輸出業者と協力関係を築く役割を担っており、1年の3分の1を海外で過ごした経験もあるそうだ。

「カカオ農家の中には、品質のいいカカオ豆とはどんなものなのかがわからない人も多く、どうしても収穫量ばかりを追いかけてしまう傾向があります。そういう人たちに品質の重要性を理解してもらい、栽培や収穫、発酵、品質管理の方法などを教えるのが私たちの仕事。出来上がった高品質なカカオ豆は明治が責任を持って買い取ることで、農家さんは安定した収入を得られ、安心してカカオの生産を続けられる仕組みなのです」

農家だけでなく、明治にとっても、メリットは大きい。

カカオ豆は、商社が産地で買い付けて日本へ運び、メーカーがそれを購入するケースが一般的だ。

だが、それだと他メーカーも同じカカオ豆を入手できるため、商品で差別化がしにくい。MCSを通じ、独自ルートで買い付けができることは明治のアドバンテージになる。

また、自分たちが求める高品質なカカオを安定調達できることも大きい。

現在、世界全体でチョコレート消費量は増加しており、カカオ豆の調達は不安定になりがちだ。

原料調達のリスクを抑えられることが、商品の供給量維持や価格安定につながっているのだ。

インスタ映えするパッケージも人気

画像: 無地部分が多く、クラフト感のあるパッケージはイラストのキャンバスになる。

無地部分が多く、クラフト感のあるパッケージはイラストのキャンバスになる。

画像: パッケージのカカオポットを切り抜いて絵画の一部に使ったり、ピアスに加工したりして、SNS投稿する人も多い。

パッケージのカカオポットを切り抜いて絵画の一部に使ったり、ピアスに加工したりして、SNS投稿する人も多い。

カカオの品質でいえばもっと高くすべき?

ところで、明治 ザ・チョコレートの価格については、明治の社内で議論となった。

200円を超えると消費者の購入意欲が下がるという意見がある一方で、使用しているカカオのクオリティから考えたら、もっと高くてもいいのではないかという意見も出たのだという。

「最終的には、私たちがなぜスペシャリティチョコレートを作るのかという視点が決め手になりました。本当においしいカカオの味わいを多くの人に知ってもらうこと、それをなるべく多くの人に提供することは、明治のメーカーとしての使命です。品質も価格も高いチョコレートは、専門店に任せておけばいいことだと考えたのです」

最後に、山下さんに今後の目標を訊いてみた。

「欧米のチョコレート先進国では、大人の男性であっても、お気に入りのチョコレートや専門店について熱く語ることができます。日本でも、それが当たり前になってほしいですね。明治 ザ・チョコレートをきっかけにして、大人がチョコレートを楽しむ文化が根づいたらいいなと思っています」

国際コンクールで品質評価を獲得

画像: ベルギーのiTQiやイギリスのAOCなどさまざまな国際コンクールでも品質評価を獲得。パッケージには受賞のマークが記載されている(左は2016年のiTQi受賞の模様)。

ベルギーのiTQiやイギリスのAOCなどさまざまな国際コンクールでも品質評価を獲得。パッケージには受賞のマークが記載されている(左は2016年のiTQi受賞の模様)。

Memo 
当初は4種類だった商品ラインアップだが、現在は8種類へと増加。同じカカオ含有率でも、香りの傾向や味わいの濃さ、華やかさなどが異なるため、食べ比べしても楽しい。

インタビュー、執筆/加藤 肇(フリーライター)

※表示の価格は、記事制作時のものです。

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