動画編集アプリの選び方
動画編集には高額なアプリが必須と思うかもしれないが、それはさにあらず。確かに、編集アプリには本格的な機能を搭載した高額な製品もあるが、一方で無料で使えるお手軽なアプリもある。まずは手始めとして、本章では有料・無料の動画編集アプリの違いなどについて紐解いていこう。
作りたい動画によって必要なソフトは変わる
近所のコンビニへ行くのにわざわざスポーツカーに乗り込む必要がないように、簡単なムービーを作る程度でプロユースの編集アプリを使うのはあまり賢いやり方とはいえない。
もちろん、高額な動画編集アプリにはムービー制作に必要な機能はもれなく揃っているが、簡単な動画を作るのに必須な機能は、トリミングやテロップなど、両手で数えるほどしかない。それでも大は小を兼ねるの例に従い、多機能な高額アプリを使っておけば間違いないと思うかもしれないが、それは場合によりけりだろう。
確かに高性能な編集アプリには多彩な機能が揃っているが、当然、そのぶん煩雑な操作を要求される。最終的なゴールがプロ級の動画制作ならそうした苦行を耐え抜く価値もあるだろうが、簡単なムービーを作りたいだけならまったくの無意味だ。シンプルな動画を制作したいだけなら、実は、シンプルな機能的のみ揃えた無料アプリのほうが操作方法や制作手順も圧倒的にマスターしやすく、ビギナーに向いているといえる。

高機能なムービー編集アプリはプロ級の動画制作にも対応するが、操作をマスターするには相当の努力と時間が必要となる。
blog.adobe.com有料アプリのメリット・デメリット
有料の編集アプリのメリットは、なんといってもムービー編集に役立つ機能を豊富に搭載している点に尽きるだろう。タイムライン上で動画や音声の複数トラックを扱えるほか、見栄えのするテロップを挿入したり、人目を引くエフェクト効果をつけたり、さらには映像に色調補正を施したりなど、撮って出しの動画をプロ級の作品へと昇華させるための機能がふんだんに用意されている。
有料ソフトには多彩な製品があるが、なかでも有名なのがアドビの「Premiere Pro」だ。テレビ番組の制作でも採用されているだけあって、プロユースにも余裕で対応する高機能を実現。映像の品質に徹底的にこだわりたいなら、真っ先に検討すべきアプリといえるだろう。

アドビの「Premiere Pro」はハイアマチュアのみならず、プロの制作現場でも利用されることが多い本格的なムービー編集アプリだ。
helpx.adobe.comほかにも有料アプリにはアップルの「Final Cut Pro」や、グラスバレーの「EDIOUS X Pro」もあるが、こちらもテレビや動画配信の現場でも使われている実績を誇り、Premiere Proと比べても遜色ない機能を備えている。
ただし、あまりの多機能性ゆえ、ビギナーにはハードルが高すぎるのも事実だ。よほど覚悟して臨まないと、ムービーが完成する前に途中で挫折してしまう可能性も少なくない。
さらに、ここで紹介した有料の動画編集アプリは決して安価ではない点も留意したい。例えば、アドビのPremiere Proはサブスクリプション制で販売されており、最も安価なプランでも月額2728円の費用が発生する。一方、買い切り制のFinal Cut Proは3万6800円、EDIOUS X Proは6万5780円と気軽に衝動買いできる価格帯とはいい難い。実際に購入して自分に合わなかったと諦めるには、やや高すぎる授業料といえるだろう。
無料アプリのメリット・デメリット
実は、無料の動画編集アプリは思いのほか多数存在する。とはいえ、ここが難しいところなのだが、出自が明らかで信頼性が期待できる商用の有料アプリと違って、無料アプリの場合は様々なメーカーや開発者が提供していることもあって品質面にはバラツキがある。
もちろん、個人の開発者が提供する無料アプリであっても多くのユーザーから支持される素晴らしいものもあるし、有料アプリが無料アプリを必ず上回るというものではない。問題は、ビギナーが有象無象の無料アプリから自分に適した1本を見極めるのは非常に難しいという点だ。
そうした観点から考慮すると、ビギナーが利用する無料の動画アプリは出自の明らかな大手メーカーが提供するものを利用するのがもっとも無難といえる。そうしたアプリの代表格としてはマイクロソフトがWindows10/11の標準アプリのひとつとして提供する「フォト」や、アップルが手掛けたMac OSとiOS向けの無料アプリ「iMove」が挙げられる。

Windows10/11には無料で写真や動画の編集が行える「フォト」アプリがプリインストールされている。
両者ともに機能面は有料アプリより劣るものの、動画のトリミングやシンプルなテロップの挿入程度なら問題なく利用可能。機能面が抑えられているぶん、覚える操作も少なくて済むため、ビギナーでも比較的簡単にマスターできる点もうれしい。さすがにテレビ番組さながらの豪華な映像を作成するのは無理だが、仲間うちで楽しむプライベートな動画作りなら十分事足りる。
Windowsパソコンユーザーなら標準アプリ「フォト」がおすすめ
前章でも触れたが、Windows10/11にはムービー編集が可能な「フォト」アプリがプリインストールされている。「フォト」という紛らわしい名称のため「写真専用」と思っている人も多いだろうが、実際には写真と動画の編集にしっかり両対応している。
10/11の標準アプリ「フォト」は動画編集にも対応
フォトの動画編集機能は非常にシンプルだが、それでも動画のトリミングを始め、テロップやエフェクト効果の挿入、さらには最大フルHD解像度でのムービー書き出しなど、ちょっとした映像クリップを作る程度なら十分すぎるほどの機能が揃っている。

シンプルなテロップならいとも簡単に作成可能だ。
旅行や誕生日、アウトドアなど、スナップ的に撮り溜めた動画から選り抜き動画を編集する程度なら問題なくこなせるし、ゆくゆくは高機能な商用アプリにチャレンジしたい人にとっても絶好の入門用アプリといえるだろう。