デジカメでもっときれいに写真を撮りたいと誰もが思うもの。実はちょっとした工夫で、写真はワンランクアップするのだ。ここでは、誰でも手軽にできる撮影テクを伝授しよう。
(1)背景をぼかした写真を撮ってみたい
背景の大きなボケに加えて、木漏れ日による玉ボケを作る
ボケの大きさは、レンズの焦点距離、絞り値、撮影距離によって変わってくる。
中でもマクロレンズは、同じ焦点距離の一般的なレンズと比べて最短撮影距離が短いため、大きなボケ効果が得やすい。そのため、被写体の周囲の煩雑化が防げ、ねらった被写体の存在感を高めることができる。
だが、ボケをより生かしたいなら、その効果の大きさだけではなく、ボケの質も考えながら撮影したい。注目したいのは、周囲の「色の選択」と「光の変化」である。
色の選択に関しては、被写体を目立たせるために、同系色・同濃度の色は避けよう。また、光の変化については、被写体の形が際立つ明るさを選びたい。さらに、その画面内に木漏れ日や細かい反射などが入ると、それが、写真の雰囲気を高めるアクセントになってくれる。
【before】
緑の背景にオレンジ色の花が映えるが……
【このワザを使え!】
カメラの位置を下げてアングルを変えると、背景に木立ちからの木漏れ日が入った
【完成】
カメラの高さやアングルを変えたことで、点光源が広がる背景になった
もともとの背景は花壇の草だったが、カメラの高さやアングルの変化させたことで、木漏れ日による点光源が広がる背景が作れた。その印象を高めるため、花の上のスペースを広くあけた構図にした。
(2)花を思いっきり大きく写し止めたい
マクロレンズで一部分を切り取り、幻想的なイメージを追求する
マクロレンズは、至近距離までピントが合い、シャープな描写が得られるスグレモノだ。
マクロレンズのクローズアップ撮影で気をつけたいのが、ピント合わせ。撮影距離が近くなるため、ピント位置が微妙にズレたりするのだ。
そんな本格マクロ域の撮影では、フォーカスモードをMF(マニュアルフォーカス)に切り替えて、ファインダー像やピーキング機能(電子ビューファインダー機でのピント合否確認機能)を頼りに、ピントが合うタイミングを見計らってシャッターを切る。
ちなみに、被写体としては、大きめで花弁やシベに特徴がある花がいい。そうすれば、一輪を部分的に切り取れて、肉眼の視覚とは異なるマクロの世界が追求できる。
【before】
標準レンズで撮ると……
【このワザを使え!】
中望遠と呼ばれるマクロレンズで、花弁内の鮮やかな絵柄を切り取る
“洋ランの女王”カトレヤ。その花をマクロレンズで部分的にねらうと、画面いっぱいに鮮やかで幻想的な世界が広がった。
【完成】
カトレヤの一部分をねらってみた
(3)小さくて細い被写体にピントが合わない
MF+最短撮影距離設定を使い、ピンポイントで合わせる
多くのマクロレンズは、最大撮影倍率が1倍(等倍)だ。これは、センサー上の被写体サイズが実物大であることを表している。
だが、そういったレンズでも大きく写すことができない、非常に小さな被写体も少なくない。極小の被写体の場合、大きく写せないだけでなく、AFがうまく働かないこともある。背景など、異なる場所にピントが合ったり、AFが延々と迷い続けたりするのだ。
そんなときこそ、MFを活用して撮影するといい。
まず、最大限に大きく写すため、ピントリング操作で最短撮影距離の位置に設定しておく。ピント位置は、あらかじめ決めておこう。
その状態で、自分の体を前後させ、ピントが合うタイミングでシャッターを切るのである。
【before】
細いトゲにピントが合わない
【このワザを使え!】
MFに切り替えて、レンズの距離目盛りを見ながら最短距離に設定
【完成】
トゲの先端にピントが合った!
ピント位置を最短にセットして、体を微妙に前後に動かすことで、ねらったトゲの先端にピントを合わせることができた。
撮影・解説/吉森信哉(フォトグラファー)