【腎臓病の食事療法最前線】注目ポイントは減塩・タンパク質制限・カリウム

美容・ヘルスケア

最近では以前ほど、たんぱく質の制限を厳しく言わなくなってきました。たんぱく質を減らすと摂取エネルギーも減り、エネルギー不足を補おうとして自分の筋肉=たんぱく質を分解してしまうのです。その結果、むしろ腎臓の負担となってしまうケースがあるのです。【解説】飯野靖彦(あだち江北メディカルクリニック院長・日本医科大学名誉教授)

解説者のプロフィール

飯野靖彦(いいの・やすひこ)
あだち江北クリニック院長。医療法人社団やよい会理事長。日本医科大学名誉教授。1973年、東京医科歯科大学医学部卒業後、同第二内科入局。横須賀共済病院内科、自治医科大学透析室を経て、ハーバード大学で腎生理学研究に取り組む。東京医科歯科大学腎センターで透析、移植療法を主任として指導した後、98年、日本医科大学教授となり、現在に至る。

たんぱく質制限が逆に負担となることも!

腎機能の数値が下がっていると指摘された、慢性腎臓病と診断されたという場合、食事について留意すべきことがあります。ポイントは、大きくいって三つあります。

減塩はしっかりと
たんぱく質の制限は慎重に
カリウムに要注意

まず、減塩はできるだけきっちり行うことをお勧めします。

腎臓の機能が低下した状態では、ナトリウム(塩分)の排出機能が落ちています。このため、塩分をとり過ぎると、血圧が上がって体はむくみ、腎臓に過剰な負担をかけます。

およその目安としては、1日の塩分の摂取量は6gまでです。さらにいえば、3~6gを目標に抑えるのが理想的です。特に高血圧のかたは、塩分制限が非常に大切です。

したがって、塩分の多いハムソーセージなどの加工食品、はんぺんかまぼこなどの練り物もできるだけ控えましょう。同じ理由で、漬物佃煮干物もお勧めできません。

塩分を控えめにしても、おいしく食べられるように、素材そのものの味を生かせる新鮮な食材を選ぶ、だしをきかせる、レモンや酢などの酸味や香辛料を活用するなど、いろいろ工夫してみましょう。

(詳細は別記事:腎臓ケア特選レシピを参照)

次に、たんぱく質の制限についてです。食事で摂取したたんぱく質は体内で代謝され、不要な分は老廃物となって血液中にたまります。血液は、腎臓でろ過され、老廃物は尿として排出されるのです。

したがって、たんぱく質を過剰に摂取すると、老廃物が多くなって、腎臓への負担が増えます。腎機能を保つためには、たんぱく質の摂取量を抑えたほうがいいといえます。

しかし、最近では以前ほど、たんぱく質の制限を厳しくいわなくなってきました。厳し過ぎる制限は、かえって逆効果の結果を招く場合があるからです。

たんぱく質を減らすと摂取エネルギー(カロリー)も減ります。エネルギー不足に陥ると、筋肉からやせていきます。つまり、エネルギー不足を補おうとして、自分の筋肉=たんぱく質を分解してしまうのです。

その結果、むしろ窒素代謝物が増え、腎臓の負担となってしまうケースがあるのです。

腎臓病の病期は、5段階のステージに分類されていますが、

ステージが1~2の初期段階のかたは、「たんぱく質の摂取は控えめ」にという程度でいいのです。

それより重症になれば、制限が必要になります。

ステージ3aのかたは、標準体重(身長m×身長m×22)当たり0.8~1.0g/1日、ステージ3b~5までのかたは、標準体重当たり0.6~0.8g/1日です。例えば、ステージ3aで標準体重が50kgのかたなら、1日当たりのたんぱく質の摂取目安は、40~50gになります。

たんぱく質については、単に制限するだけでなく、できるだけ良質の物を選びましょう。例えば、卵、魚、肉、牛乳、乳製品などです。

また、たんぱく質を減らす場合、エネルギー不足にならないよう、摂取に気を配る必要があります。

1日当たりの必要エネルギーは、5段階のステージ共通で「標準体重kg×25~35kcal/1日」です。エネルギー量は、その人の活動量によっても違います。

例えば、活動レベルが普通で、標準体重が50kgの人は、1日の必要エネルギー量の目安が、1500~1750kcalになります。

エネルギー量が足りなくなりそうなら、油を使った料理を適度に食べる、市販の高エネルギー補助食品を活用するなどの工夫が必要です。

野菜はゆでてから使ってカリウムを効率よく除去

第三に、カリウムの扱いです。

一般には、健康によい野菜や果物ですが、実は、カリウムが多いのです。腎機能が低下し、カリウム制限が必要になったかたにとっては、要注意です。

特にバナナ、メロン、キウイフルーツは、カリウムが多いため、食べ過ぎは控えましょう。

カリウムの豊富な野菜・イモ類は、小さめに切ってからゆでこぼすか、水にさらしてから調理しましょう。

ゆでた場合に除去できるカリウム量は、ホウレンソウなどの葉茎菜類で約45%、インゲンマメなどの未熟豆類で約30%です。小さめに切ったり、ゆでたあとによく水を切ったりしぼったりすれば、カリウムをより除去できます。

水にさらす方法でも、ゆでたときと同様に種類や切り方で相違が見られますが、タマネギなどの根菜類はカリウムの約40%が除去できます。

また、海藻類もカリウムが多く含まれていますので、一度に多量に摂取することは控えましょう。

慢性腎臓病の食事療法は、患者さん一人ひとりの病気の状態や重症度によって、大きく異なります。腎臓病のステージや検査数値などを参考に、具体的な食事内容については、必ず主治医や管理栄養士の指導を受けるようにしてください。

《腎臓病における食事のポイント》
❶ 減塩はしっかりと行う
およその目安としては、1日の塩分の摂取量は6gまで。さらに、3~6gを目標に抑えると理想的。
❷ たんぱく質の制限は慎重に
極端な制限を行い、エネルギー不足にならないよう注意すること。摂取の目安は以下のとおり。
※ステージ3a=標準体重当たり0.8~1.0g/1日
※ステージ3b~5=標準体重当たり0.6~0.8g/1日。
❸ カリウムに要注意
野菜や果物は、カリウムの含有量が多い。ゆでこぼしたり、水にさらしたりするなど注意が必要。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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