100キロ近いロングライドも楽にできてしまう「e-bike」
e-bikeは、フレームの設計からパーツのアッセンブル、そして心臓部である電動ユニットまで、スポーツ自転車としての快適性や長距離走行に適した仕様が特徴だ。アシストなしの純粋なスポーツバイクも人気だが、アシスト付きなら坂道や向かい風に苦しむことなく走れる。いってしまえば、100キロ近いロングライドも楽にできてしまうのだ。
運動不足解消のため、週末のサイクリングを趣味にしようと考えている人や、シニア層、さらには体力差のある男女や親子でスポーツバイクを楽しむのにも最適だ。そのほか、信号のストップ&ゴーが多い自転車通勤・通学シーンでも快適さを約束してくれる。自転車の楽しい部分だけを感じられる新世代の自転車だ。

軽量でドロップハンドルを装着した競技向けのスポーツ自転車にも電動ユニットを搭載したモデルが登場している
日本の交通安全性を考慮した電動ユニットの規格が定まり、各メーカーともe-bikeの開発を強化。ユニット性能は同じでも、モデルによって走行性能は千差万別だ。
今回は、注目のe-bikeに、いわゆる「ママチャリ」と呼ばれるシティ自転車を一部加え、全7モデルを実走にて比較。特徴や最適な使用シーンについて紹介していこう。
●都内の激坂でアシスト力をチェック!
7モデルのインプレッションは、東京都内屈指の激坂で知られる「のぞき坂」(東京都豊島区高田2丁目付近)を含めた周回コースで実施。最大勾配22%、全長150メートルの坂道は、電動アシストの能力を測るにはもってこいのシチュエーションだ。
●採点項目について
アシスト力(平坦路)
低速域からスピードアップする際のギヤのかかりと推進力をチェック。
アシスト力(坂道)
ユニットの絶対的な出力に影響される坂道でのアシスト力をチェック。
シティライド適正
街中走行に適した装備や走行性能を有しているかを評価。
ロングライド適正
長距離走行に適したバッテリー容量や走行性能を有しているかを評価。
コンポーネント
バイクを構成するパーツのスペックや機能を総合的に評価。
取り回しのしやすさ
乗車時以外の自転車の運搬のしやすさや収納性のよさを評価。
コストパフォーマンス
走行性能をはじめとする諸々のスペックと価格のバランスを判定。
16キロの軽さを実現したスタイリッシュなe-bike
❶ヤマハ
YPJ-C
価格:18万5000円(税別)


電動アシスト自転車
YPJ-C
電動アシストのパイオニアであるヤマハから登場した、快適なスポーツ走行を追求したクロスバイク。軽量アルミフレームを採用し、シマノのSORAグレードのコンポーネントを採用したぜいたくな仕様で、重量16.1キロを実現。2.4アンペアの小型バッテリーを搭載し、圧倒的な軽さを誇る。
e-bikeといえば、バッテリーが切れた際に20キロを超える重量がネガティブ要素になりやすかったが、その常識を覆すのがこの次世代モデル、YPJ-Cだ。
16.1キロという重量は、標準的なe-bikeよりも4キロほど軽く、アシストなしの状態でもスポーツバイクとしての機敏な走行性能を実現している。そのうえで、アシストが欲しいゼロ発進(停止状態からの初速)や坂道のシーンにおいて確実にアシストパワーが働いてくれる印象だ。
小型のバッテリーを搭載しているため、アシスト能力はエコモードで距離48キロまでとやや控えめだが、街中の移動や通勤・通学での走行には十分。軽量アルミフレームやスポーツ仕様のコンポーネントなど、バイクそのものに妥協をしていないため、優れた走行性能が結果的にアシストの効率性を高めている。50キロ程度のツーリングも快適に楽しめるだろう。
アシストユニットやバッテリーがうまくフレームに融合した、スタイリッシュなスポーツ電動自転車といえる。

坂道では、足への自然なトルク感はありながらも確実にアシストしてくれる。車重の軽さを生かした登坂力を発揮する。

キビキビしたスポーツバイクとしての性能を実感。ストレスのない変速性能も魅力。平地ではエコモードで十分だ。

数値とグラフを融合し、高い視認性を追求した大型ディスプレイを採用。
タイヤは快適性を約束するオンロード走行に適した28Cサイズ。

スタイリッシュな小型バッテリー。モバイルバッテリーとしても活用できる。

バイクの軽量化に貢献するヤマハ独自の小型ドライブユニットを採用。

何より大切な安全性は、シマノSORAグレードのブレーキによって確保している。

ロングライドでも疲れにくい乗車姿勢を追求したフレームジオメトリーを採用。
【まとめ】
平坦ではスッーと優しく背中を押してくれるナチュラルなアシストを約束。傾斜22%の激坂も、軽めのギアにアシストパワーを借りることでクリア。優れた加速と安定性に加えて乗車姿勢も取りやすく、ツーリングデビューにも最適だ。

【SPEC】●アシスト距離:ECO48㎞、STD22㎞、HIGH14㎞ ●電動機出力:240W ●バッテリー:25.2V、2.4Ah ●充電:約1時間 ●変速:18段(前2/後9) ●タイヤサイズ:28C ●サイズ:M、XS ●重量:16.1㎏(M)
本格的なロードスペックに安心のアシスト力を搭載した本格派
❷ヤマハ
YPJ-ER
価格:32万円(税別)


電動アシスト自転車
YPJ-ER
ヤマハのYPJシリーズにラインアップされるドロップハンドル採用の本格派スポーツアシスト自転車。アシストパワーと走行距離を重視した大容量バッテリーが、100キロを超える週末ロングライドの世界観を変える。
初速からの動き出しでは力強くアシストし、高速域までの加速感は自然なフィーリングを生む。油圧式ディスクブレーキがライドの守備範囲を広げ、ドロップハンドルは低いポジションを取れるだけでなく、握り位置を変えることで疲れの分散にもつながる。

坂道走行時にも無理のない姿勢を取りやすく、今回のような急坂もストレスなく登れる。

踏み出しの気持ちよさ、コーナリングでの安定性や操作性は、ロードバイクならではの走行感。

コンパクトな画面に多彩な情報を表示する。

油圧ディスクブレーキが安心の制動力を約束。

ハイモードで93キロを実現した大容量バッテリー。

スポーツ走行に適したドライブユニットを搭載。
【まとめ】
あらゆるシーンで弱点がなく、アシスト力、バッテリー容量、走行性能など、全方位に高い能力を実感できる。高価ではあるが、スペックに対しての価格は妥当な範囲だ。

【SPEC】●アシスト距離:プラスエコ242㎞、エコ152㎞、スタンダード111㎞、ハイ93㎞ ●電動機出力:240W ●バッテリー:36.0V、13.3Ah ●充電:約3.5時間 ●変速:20段(前2/後10) ●タイヤサイズ:35C ●サイズ:L、M、S ●重量:19.6㎏(M)
高い視点を確保しやすく、日常の足として申し分ない実用車
❸ヤマハ
PAS With
価格:11万円(税別)


電動アシスト自転車
PAS With
世界初のパワー・アシスト・サイクル(PAS)としてデビューしたロングセラーモデルの最新ベストバリュー。またぎやすいフレーム設計など、街中での実用性を重視した設計と性能を追求。ヤマハ独自設計の自然なアシスト感覚と、必要に応じたパワー制御を実現。
買い物や通学など、実用性重視で開発されたPASは、YPJ同等のアシストユニットを搭載し、車重が気にならない加速性能を誇る。また、低重心化を実現し、クッション性の高いサドルにどっしりと座りながら走れるため、誰でも乗りこなしやすい。

急がなければ、マイペースをキープしながら楽に坂を上がれる。

街中で高い視点を確保しやすいアップライトな姿勢が取れる。

シンプルなモード切り替えや時計が付くメーター。
耐久性に優れるタイヤとステンレス製のホイール。

急速充電に対応し、日常使いに適したバッテリー。

スムーズなアシストを実現する「スペック機能」搭載。
【まとめ】
今回唯一のシティ自転車として、スポーツタイプのe-bikeとはやや評価基準を分けて採点した。快適さを約束する日常の足としては申し分ない満足度が得られる。

【SPEC】●アシスト距離:オートエコモードプラス76㎞、標準56㎞、強48㎞ ●電動機出力:240W ●バッテリー:25.5V、12.3Ah ●充電:3.5時間(30分で25%) ●変速:内装3段式 ●サイズ:26型、24型 ●重量:26.0㎏(26型)
高次元でバランスの取れたクロスバイク仕様のe-bike
❹ミヤタサイクル
クルーズ
価格:26万9000円(税別)


e-バイク クルーズ
街乗りからツール・ド・フランスで活躍するブランドまで展開するミヤタサイクル。クルーズは、コンポーネントメーカーであるシマノが開発した電動アシストユニット「STEPS E8000」を日本で初めて搭載したモデル。クロスバイクタイプながら、エコモードで115キロのアシストを実現。
週末のアクティビティとしてロングライドに興味があってe-bikeを検討しているなら、有力候補になる一台だ。エコモード時で115キロのアシスト距離を実現し、一方でハイモード時の強力なパワーはあらゆる坂道を走破。フロントギヤはユーティリティ性の高い歯数44Tのシングルギヤで、リアは最大32Tを用意して、ロングライドでの山道にも対応する。今回走った勾配22%ののぞき坂でも、余力すら感じさせた。
また、長い下り坂や雨天時に安心のブレーキコントロールを約束する油圧ディスクブレーキを搭載。コクピットまわりも充実し、シマノSTEPSと連動する専用コンピューターは視認性も良好。
ソフトな握りのハンドルグリップやクッション性のあるサドルなど、細部のパーツのクオリティも満足度を高めてくれる。ハンドルグリップからモード切り替えスイッチへのアクセスのよさなど、かゆいところにも手が届く。
カラーもクリアブラックに加えて、新色のピュアホワイトパールも登場した。

のぞき坂は、さすがにノーマルモードではきつかったが、ハイモードに切り替えたところ、余裕でクリアすることができた。

直進安定性が高いので、アシストをかけたときに高い推進力を生むことができる。軽いブレーキ操作性もディスクならではだ。

STEPS専用のコンピューターにはモードごとのアシスト可能距離が表示される。
KENDAの28Cタイヤを装着し、路面状況を選ばずに走破できる。

大容量バッテリーは残量表示もあり、クルーズ専用デザインを採用する。

STEPS(Shimano Total Electric Power System)の国内向けユニットを搭載。

停車時に手軽に施錠ができる堅牢なサークルロックを標準装備。

バッテリーやサイクルコンピューターと連動する独自のバッテリーランプを装備。
【まとめ】
総合評価は高い。快適で安心できる走行性能と、大容量バッテリーが実現した長距離アシストが、週末のロングライドの扉を開く。モード切り替えボタンの操作性、使い勝手のいいサークルロックなど、細部の設計まで申し分ない。

【SPEC】●アシスト距離:ECO115㎞、NORMAL106㎞、HIGH78㎞ ●電動機出力:250W ●バッテリー:36V、11.6Ah ●充電:約1時間 ●変速:9段(前1/後9) ●タイヤサイズ:28C ●サイズ:430㎜、460㎜ ●重量:18.7㎏(460㎜サイズ)
解説/橋本謙司(スポーツジャーナリスト)
撮影/河野公俊
※価格は記事制作時のものです。