認知症の人が穏やかに暮らすために「認知症ケア」と呼ばれるものがあります。認知症のケアが、認知症の人にとって、安心感やリラクゼーションがより心身の安定をもたらすとわかってきました。とくに、興奮や徘徊といった行動・心理症状(周辺症状=BPSD)は、心身の安定によって、状態が改善されることが多いのです。ここでは、リハビリやセラピーといった薬を使わない認知症の非薬物療法の種類を紹介しましょう。また、最近では、家族でもできる「タッチセラピー」にも注目が集まっています。

認知症はケアで良くなる?

認知症になっても、認知機能の低下を抑制したり、症状を緩和や改善させる方法があります。
その方法のひとつに、リハビリやセラピーといったケアが挙げられます。
リハビリと聞くと、身体リハビリテーションのように、もと通りの機能を取り戻すというイメージを持たれるかもしれませんが、認知症の場合は、脳の活性化が目的であり、結果として、進行の抑制や予防になったり、心身残存機能が維持されたり、行動・心理症状が落ち着いたりと、日常生活の改善に結びつきます

認知症のさまざまなケア

認知症の方を対象とする病院や施設、認知症カフェのような集いの場、さらには自宅で、さまざまなリハビリやセラピーが行われています。次に、いくつかご紹介します。

・回想療法

回想療法は、グループ数名で共通する話題を選び、残されている長期記憶を活用して、思い出を語り合います。
気持ちを和ませる、感情を安定させる、話をする事で孤立感や孤独感を癒す、楽しい時間を過ごして精神面や行動面での安定を得る、といった好影響が期待されます。

・リアリティ・オリエンテーション

今日が何日か、季節はいつか、今どこにいるか、といった見当識の障害にアプローチし、現実の認識を深めます。
具体的には、日常会話の中で、季節や時間や日にちの質問を繰り返します。
例えば、朝食を作りながら「朝は忙しいわね」、テレビを見ながら「水曜だから〇〇番組がやっているわね」と、さりげなく声掛けします。

・音楽療法

音楽を楽しむことで、脳が活性化したり、気持ちが落ち着くのは、広く知られています。
さらに、認知症の人は、昔の歌を歌うことが、回想療法や見当識を高めるリアリティ・オリエンテーションのような効果を持つとされます。
加えて、音に合わせて体を動かすことが、心身に良い効果があると評価されています。

・作業療法

園芸、手芸、工芸といった、創作や生活動作が、脳や身体の機能回復や機能低下予防の訓練になります。
認知症の人には、楽しめること、興味がわくことを選ぶのがいいでしょう。

・運動療法

脳のどの部分が、どれぐらい障害されているかにより、適切なプログラムは異なりますが、5
~10分の軽い運動でも、認知症の人には、心身や認知機能の良い刺激になります。

・アニマル療法

犬や猫が横にいると、話しかけたり、触ったり、一緒に散歩したり、自然といろいろな行動を起こします。また、動物好きほど、「かわいい」という気持ちが刺激となり、充実した一日を過ごせます。
動物と交流することは、生理的にも、身体機能的にも、心理的にも、社会的にも、さまざまな刺激を得られます。

・化粧療法

お化粧やマニキュアをすると、女性でいることの意識が働き、いつもより若返って、表情も明るくなり、楽しそうに生き生きします。

・アロマ療法

アロマ精油の持つリラックス効果が、認知症の行動・周辺症状や、睡眠障害の改善に役立つことがあります。

家でもできる「優しいケア」に注目

画像: 家でもできる「優しいケア」に注目

最近は、認知症緩和ケアとして、タッチセラピーといわれる、触れるケアが注目されています。タッチングと呼ばれるやさしい肌の触れ合いで、安心感や心地よさを感じ、不安や心配が軽減されます

・タクティールケア

スウェーデン生まれの認知症緩和ケア。ゆっくり相手の体に触れるケアで、安心と信頼のホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌され、不安や興奮が抑えられます。

詳しくはこちら:株式会社日本スウェーデン福祉研究所(JSCI)

・ユマニチュード
フランス生まれの、認知症ケアのひとつ。見る、話す、触れる、立つ、の4つの動作を基本に、介護現場で用いるのに良いコミュニケーション技法です。

詳しくはこちら:ジネスト・マレスコッティ研究所 日本支部

・バリデーション
アメリカで開発された、認知症の人とのコミュニケーション術。バリデーション=認める、を基本姿勢とする14の技法から成り、非言語コミュニケーションとして、タッチングも含まれます。

詳しくはこちら:一般社団法人 公認日本バリデーション協会

◆大田ひとみ
精神科専門のソーシャルワーカー・精神保健福祉士。フリーランスで医療相談や生活支援、家族相談、ときに講師、と幅広い仕事に従事。専門は認知症。たとえ認知症であっても地域で穏やかに過ごし続けられる、シニア生活の環境改善をライフワークとする。近年は特に在宅医療の支援に注力している。

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